2025/10/10
エトミデートの個人輸入は、2025年5月に法律で禁止されたため、できません。
SNSやニュースで「ゾンビタバコ」という言葉を知った方もいるのではないでしょうか。
「ゾンビタバコ」とは、電子タバコ用リキッドに違法薬物である「エトミデート」を加えたものです。
エトミデートに興味を持ち、個人輸入できないかと考えてこの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。
しかし、エトミデートは2025年5月に厚生労働省により「指定薬物」に指定され、個人輸入が禁止されました(参考文献:指定薬物を指定する省令が公布されました|厚生労働省)。
本記事ではエトミデートの個人輸入が禁止となった背景と、ゾンビタバコと呼ばれる理由、安易に使用した場合のリスクを薬剤師が解説します。

【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム
おかげさまで28年間、安心信頼の個人輸入代行・オオサカ堂のコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師資格保有者が監修。
目次
【結論】エトミデートの個人輸入は「指定薬物」として日本で規制されています
エトミデートは厚生労働省により「指定薬物」に指定され、2025年5月26日以降はエトミデートやこの成分を含む製品の輸入、販売、所持、使用等が原則禁止となりました(参考文献:指定薬物を指定する省令が公布されました|厚生労働省)。
これにより、個人輸入や友人等から譲り受ける行為は違法となり、現在は規制対象となっています。
エトミデートは厚生労働省が2025年5月16日に「指定薬物」に指定
厚生労働省は、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、2025年5月16日付でエトミデートを「指定薬物」に指定しました。
指定薬物とは、薬機法において次のように定められています。
中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物
(引用文献:指定薬物について|厚生労働省)
この指定の効力が発揮された2025年5月26日以降、エトミデートとそれを含む製品は、学術研究など限られた用途を除き、製造、輸入、販売、所持、使用のすべてが禁止となりました。
「個人輸入」はどれくらい重い罪?具体的な罰則(懲役・罰金)とは
薬機法に違反し、指定薬物を輸入した場合、3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはその両方が科せられる可能性があります。
販売目的で輸入・所持した場合には、より重い刑罰となるケースもあります。
さらに2025年4月からは、関税法においても指定薬物の輸入が新たに禁止となりました。
平成27年4月1日より、関税法上、指定薬物の輸入が新たに禁止されます。 関税法の規定に違反して指定薬物を輸入した場合、10年以下の懲役、3,000万円以下の罰金又はこれらの併科の対象となります。
(引用文献:平成27年4月1日より、関税法上、指定薬物の輸入が新たに禁止されます|関税)
軽い気持ちで海外サイトを通じて購入すると、人生を破綻させるほどの大きなリスクを伴います。
エトミデートとはどんな薬?作用や副作用について解説
エトミデートは海外では医薬品として、鎮静剤や麻酔導入等の目的で使用されていますが、国内では医薬品としての承認は受けていません(参考文献:国内未承認の医薬品成分エトミデートを含有する製品に対する注意喚起について|厚生労働省)。
- 脳の中枢神経に直接作用し、神経活動をブロック
- 脳内で神経の活動をブロックする働きを持つ神経伝達物質(GABA)の働きを増強
- 少量でも脳の神経細胞の興奮が強力に抑制。鎮静・催眠作用を示す
- 短時間で意識消失が起こる
- 海外では短い処置や手術に用いられる
乱用時には意識障害や運動活動を抑制するといった、危険な状態を引き起こす原因となります。非常に強力がゆえに、副作用もあります。
- 注射部位の痛み
- 筋肉の異常なけいれん様運動(ミオクローヌス)
- 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の合成抑制
- 術後の吐き気と嘔吐
(参考文献:Etomidate Side Effects|Drugs.com)
適正な使用方法以外での乱用は、命に係わる深刻な健康被害をもたらす危険性が高く、避けなくてはなりません。
エトミデートが「ゾンビタバコ」や「ゾンビドラッグ」と呼ばれる理由
エトミデートが「ゾンビタバコ」と呼ばれる理由は、乱用した人の見た目や行動がゾンビのように見えるためです。
エトミデートの吸引により、意識障害や手足のけいれん、奇声を発するなどの状態となることから、「ゾンビタバコ」や「ゾンビドラッグ」と呼ばれ広まりました。
エトミデートとはどのような作用機序の薬なのか
【エトミデートの作用機序】
脳の中枢神経に直接作用
↓
神経の活動を一気に抑える
(脳内で神経の活動を抑制する働きを持つ神経伝達物質(GABA)の働きを増強)
↓
少量でも脳の神経細胞の興奮が強力に抑制
↓
鎮静・催眠作用を示す
短時間で意識を失わせるため、海外では短い処置や手術時に用いられます。
しかし、乱用時には意識障害や運動活動を抑制するといった、危険な状態を引き起こす原因となります(参考文献:Etomidate|StatPearls)。
乱用で「どうなる?」取り返しのつかない身体への影響
【エトミデートの健康被害報告】
・手や全身の震え
・強いめまい
・永続的な神経損傷
・呼吸抑制による意識消失
・死亡例
・使用者による交通事故の発生
(引用文献:一般社団法人 国際麻薬情報フォーラム)
このように、最悪の場合、呼吸抑制により死に至るケースもあります。
また、乱用によって使用者は立ち上がることが困難な状態となり、転倒による頭部外傷といった二次被害の報告もあり非常に危険です。
さらに長期乱用により、脳や神経に深刻なダメージを残し、元の生活に戻れなくなる恐れもあります(参考文献:厚生労働省パンフレット)。
「ゾンビ様」行動の正体:自分の意思で動けなくなる恐怖
「ゾンビ様」とも言われる行動は、エトミデートの強力な中枢神経抑制作用によるものです。
使用後には幻覚のような症状が現れ、乱用により意識が著しく低下し、周囲の状況の正確な認識や、論理的な思考ができなくなります。
自分の手足を思い通りに動かせず、話そうとしても意味のある言葉を発することができない状態に陥ります。
「ゾンビタバコ」は、自分の意思で動けなくなるという恐怖があり、極めて危険です。
SNSで拡散する「ゾンビタバコ」の本当の実態
SNSでは「ゾンビタバコ」を面白おかしく紹介したり、使用した人の言動を撮影した動画が拡散されたりするケースが見られますが、これらの映像は薬物乱用の実態を映しています。
動画では奇妙な行動に見えますが、実際には当事者は深刻な健康被害のリスクにさらされているのです。
SNSではエトミデートを「笑気麻酔」や「合法大麻」といった聞き馴染みのある言葉で、いかにも危険性が低いように偽って情報を拡散します。
しかし、これらの情報に惑わされず、エトミデートは人生を狂わせる大変危険な違法薬物であることを理解し、興味本位で手を出さないようにしましょう。
エトミデートは台湾・韓国など海外でも問題に!沖縄では逮捕者も
エトミデートの乱用は海外でも大きな問題となっています。
台湾や韓国などアジアの国々でも若者の間で乱用が広がり、政府が取り締まりを強化しました。
特に台湾では、乱用により死亡例が報告されているほか、使用者による交通事故により警察官が殉職するなど社会の安全を脅かす事態に至っています。
台湾当局は事態を重く見て、エトミデートを大麻やコカインと同等の第2級麻薬に指定し、規制と取り締まりを強化しています(参考文献:一般社団法人 国際麻薬情報フォーラム)。
また、国内では沖縄県で「笑気麻酔」と称して流通し、乱用される事例が確認されており、実際に逮捕者も出ています(参考文献:危険ドラッグ|沖縄県、国内未承認の医薬品成分エトミデートを含有する製品に対する注意喚起について|厚生労働省)。
沖縄は地理的にアジア諸国との距離が近く、海外から薬物が流入しやすいと考えられています。
もし「ゾンビタバコ」をすすめられたら?自分を守るための相談窓口
繁華街やSNSで、友人などを通じて「ゾンビタバコ」をすすめられたら、強い意志を持って断ることが重要です。
関係性を壊したくないから、周りの雰囲気に流されて「一度くらいなら」と、少しでも迷っている様子を見せるとまた誘われてしまいます。
きっぱりと断るのが重要ですが、どうしても難しい場合は、「そういえば……」などと話題を変えたり、何か口実を作ったりしてその場から離れるのが得策です(参考文献:警察庁パンフレット「薬物乱用のない社会を」)。
不安を感じた場合は、一人で悩まず、信頼できる家族や友人に相談してください。
また、次のような専門の相談窓口があり、専門家が適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。
- 各都道府県の薬務課や保健所
- 精神保健福祉センター
- 麻薬・覚せい剤乱用防止センター
- 警察署の相談窓口
(参考文献:警察庁パンフレット「相談してみませんか」)
エトミデートの個人輸入に関するよくある質問(Q\&A)
Q1. なぜ「ゾンビタバコ」と呼ばれるのですか?どんな効果がありますか?
A.
「ゾンビタバコ」と呼ばれる理由は、使用者が自分の意思で身体をコントロールできなくなり、意識が朦朧とした状態でふらつきやけいれん、奇声を発するといった姿が「ゾンビ」のように見えるためです。
これは、エトミデートの強力な中枢神経抑制作用により、脳の機能が低下することで起こります。
使用により快楽がもたらされるわけではなく、錯乱や幻覚、意識消失などの危険な状態を伴い、場合によっては生命の危険に直結します。
Q2. エトミデートはケタミンやプロポフォールとどう違いますか?
A.
エトミデート、ケタミン、プロポフォールは、いずれも医療現場で麻酔薬として使用されますが、作用機序が異なります。
エトミデートは、脳内でGABAの働きを増強し、鎮静・催眠作用を示しますが、ケタミンはNMDA受容体を阻害し、麻酔作用や鎮痛作用を示します。
なお、プロポフォールの鎮静・麻酔導入作用は脳で発揮されるものの、詳細な作用機序は解明されていません。
エトミデートは短時間で意識を失わせますが、プロポフォールは持続的な鎮静に使われます。
またケタミンは覚醒時に幻覚や興奮症状が起こることがあります。
Q3. フェンタニルなどのドラッグとどう違いますか?
A.
エトミデートとフェンタニルは全く異なる性質を持ちます。
エトミデートは脳内に直接作用し、鎮静・催眠作用を示しますが、フェンタニルはオピオイド受容体に作用し、強力な鎮痛作用を示します。
フェンタニルは医療用麻薬として、手術後の疼痛や癌性疼痛の緩和などに用いられますが、多幸感や依存、呼吸抑制を起こすことがあり、医師の管理の下で適切な使用が求められます。
まとめ:エトミデートは好奇心で手を出してはいけない「規制薬物」です
エトミデートはその強力な中枢神経抑制作用により、海外では麻酔導入薬として使用されています。
一方で「ゾンビタバコ」と呼ばれるように、乱用すると意識障害や呼吸抑制など、命に関わる深刻な健康被害を引き起こします。
2025年5月には「指定薬物」として日本の法律で厳しく規制され、研究など特定の目的以外での輸入、所持、使用は重い罰則が科される犯罪行為となりました。
SNSなどで紹介されていて興味を惹かれるかもしれませんが、一度の使用が呼吸困難や最悪の場合は突然死に至るケースもあり、大変危険です。
規制薬物は、一度でも使用すると人生を大きく狂わせてしまいます。
軽い気持ちで安易に手を出さず、誘われてもきっぱり断る強い意志を持ちましょう。

「ゾンビタバコ」と称されるエトミデートは、深刻な意識障害や呼吸抑制を招く極めて危険な規制薬物です。自己判断での使用や個人輸入は法律で固く禁じられており、オオサカ堂では一切取り扱っておりません。SNS等の甘い言葉に惑わされず、正しい知識を持って誘われても断る勇気を持つことが自分を守ります。この記事が皆様の健康管理の一助となれば幸いです。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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