甘酸っぱくておいしいパイナップル。ビタミンCを多く含み、美肌効果や消化促進などを期待して食生活へ取り入れている方も多い果物です。
肉を柔らかくすることでも知られていますが、有効成分は「ブロメライン」という酵素で、消化を助ける働きがあります。
ブロメラインは、鼻や歯肉などの痛みや腫れの軽減に役立つとされています(参考文献:ブロメライン|厚生労働省eJIM)。
しかし、パイナップルと薬の飲み合わせにおいては、ブロメラインこそが注意が必要な成分の正体。
この記事ではパイナップルとの飲み合わせにおいて注意が必要な薬や、薬に影響を及ぼす仕組み、サプリメントを摂取する際の注意点を薬剤師が解説します。
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目次
- 【結論】「パイナップルと薬の飲み合わせ」はものによって注意が必要
- パイナップルの酵素「ブロメライン」と薬の相互作用の仕組み
- パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分①抗生物質
- パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分②血液をサラサラにする薬
- パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分③抗結核薬
- パイナップルと血圧の薬や風邪薬との飲み合わせは?
- 飲み合わせに注意が必要なパイナップルのブロメラインの量
- 「薬とパイナップルは時間をあければ大丈夫?」薬剤師の回答
- サプリメントでブロメラインを摂る場合の注意点と副作用
- パイナップル以外に薬との飲み合わせに注意すべき果物・ジュース
- パイナップルと薬の飲み合わせに関するよくある質問(Q&A)
- まとめ|パイナップルと薬の飲み合わせで不安なときは自己判断せず専門家へ
【結論】「パイナップルと薬の飲み合わせ」はものによって注意が必要
パイナップルと薬の飲み合わせについては、一部の医薬品との併用に注意が必要です。
パイナップルに含まれるタンパク分解酵素「ブロメライン」により、薬の吸収が高まることや、特定の薬と似た働きを持つことで効果が強く出る恐れがあります。
- 抗生物質
- 抗凝固薬
- 抗結核薬
週に1回パイナップル食べたり、月に1回食べたりなど不定期の摂取であれば心配する必要はありません。しかし、薬を服用中でパイナップルを日常的に食べたり、ブロメラインサプリメントを摂取したりする場合は、病院受診時や薬局での服薬指導時に伝えましょう。
パイナップルの酵素「ブロメライン」と薬の相互作用の仕組み
パイナップルの果実と茎に含まれるブロメラインは、タンパク質を分解する酵素で、消化促進や炎症を抑える働きがあります(参考文献:ブロメライン|厚生労働省eJIM)。
ブロメラインと薬との相互作用は、主に2つの仕組みが考えられています。
パイナップル中のブロメラインのタンパク分解作用
↓
腸粘膜などから薬が体内に取り込まれるのを促進する可能性
(参考文献:Life (Basel). 2021 Apr 6;11(4):317.)
パイナップル中のブロメラインは、血液を固まりにくくする
↓
同じように血液を固まりにくくする抗凝固薬と併用
↓
血液を固まりにくくする効果が上乗せ
↓
出血のリスクが高まる恐れ
(参考文献:ヘモナーゼ配合錠添付文書)。
もちろん、単純にパイナップルを食べたから、上記のような飲み合わせに注意が必要な相互作用が生じるわけではありません。
実際には量の概念など様々な要因が考慮されます。そのため、ここではパイナップルのブロメラインには上記のような作用があると認識していただければと思います。
パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分①抗生物質
一部の抗生物質では、ブロメラインとの併用により、血液中の濃度が上昇し、薬の働きが強く出ることが報告されています(参考文献:Life (Basel). 2021 Apr 6;11(4):317.)。
- アモキシシリン
- テトラサイクリン
また、古い情報では、ペニシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシンとの相互作用も報告されています。
これらの薬とブロメラインを一緒に摂ると、抗生物質の吸収が高まり、血中濃度が上昇すると考えられています。
併用することで抗生物質単独よりも効果的(抗生物質の血中濃度が上昇するため)であるとする報告もあります(参考文献:Biomed Rep. 2016 Sep;5(3):283-288.)。
しかし、血中濃度の上昇は、予期しない副作用発現に繋がる可能性があるため、注意しなくてはなりません。
血中濃度の上昇を狙っての自己判断での服用は危険なので避けましょう!
パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分②血液をサラサラにする薬
血液をサラサラにする薬(ワルファリンカリウム等の抗凝固薬)を服用している場合は、パイナップルやブロメラインサプリメントの摂取には注意が必要です。
ブロメラインには、血液を固まりにくくする働きがあり、副作用として血痰等の出血傾向が報告されています。
抗凝固薬と併用することで、上乗せ効果により血液をサラサラにする働きが増強する可能性が示唆されています(参考文献:ヘモナーゼ配合錠添付文書)。
結果として、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりといったリスクが生じます。
パイナップルを食べたから出血傾向がみられるといったように、短絡的な導き方はできません。しかし、抗凝固薬を服用している方は、服用中は普通よりも出血傾向が高まっているという認識が必要です。
バナナは食べないでください
「●●は食べないで」と指導されることがあります。これは、必ずしも危険というわけではなく、可能性があるリスクは排除するという意向があります。
特に抗凝固薬(ワルファリンカリウムなど)は食品との相互作用がシビアな薬剤です。「理論的に影響が低い」としても、主治医の指導(「パイナップルを避けるように」等の指示)がある場合は、必ずそれに従ってください。
その上で鼻血や歯茎からの出血、あざができやすくなるといった症状がみられる場合は、すぐ医師に相談してください。
パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分③抗結核薬
抗結核薬との併用については情報に限りがありますが、ブロメラインとの併用で効果に影響を及ぼす可能性が示唆されています。
ただし、抗生物質や抗凝固薬のように、ブロメラインがどのように影響するか、詳細なメカニズムはわかっていません。
しかしこのような注意喚起の情報があるため、抗結核薬を服用中の方は、パイナップルやブロメラインサプリメントの摂取に注意が必要と考えます。
大量摂取は避け、服用に不安のある方は処方医にご相談ください。
パイナップルと血圧の薬や風邪薬との飲み合わせは?
高血圧の薬はACE阻害薬に注意
パイナップル(ブロメライン)と、特定の高血圧治療薬について吸収を増加させる可能性が示されています(参考文献:Life (Basel). 2021 Apr 6;11(4):317.)。
- カプトプリル
- リシノプリル
飲み合わせに注意が必要と報告されているのは、カプトプリルやリシノプリルといったACE阻害剤に分類される降圧薬です。
吸収増大により薬の働きが強くなり、血圧が下がりすぎるといった思わぬ副作用が現れる可能性があります。
パイナップルと風邪薬の飲み合わせは特に問題なし
風邪薬(総合感冒薬)とブロメラインとの併用について、影響を及ぼす報告は確認できませんでした。
ただし、風邪薬には解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン剤など様々な成分が含まれています。
解熱鎮痛剤は胃腸など消化器に負担をかけるものが多く、ブロメラインの副作用での負担上昇に注意が必要です。
下痢、便秘、悪心、食欲不振、嘔吐、胃部不快感などの消化器症状
パイナップルの食べ過ぎによる副作用の発現には注意しましょう(参考文献:ヘモナーゼ配合錠添付文書)。
飲み合わせに注意が必要なパイナップルのブロメラインの量
パイナップルに含まれる、ブロメラインの量は明確にはわかりません。そのため、「パイナップル100gあたりブロメライン○○mg含有」と断定することは難しいです。
血液をサラサラにする薬の研究では3,000FIP単位で影響を与えなかったという報告もあります(参考文献:Life (Basel). 2021 Apr 6;11(4):317.)。
この3,000FIP単位という値で考えると、パイナップル(1個500gと仮定)換算で約8個分になります。飲み合わせを考える際に単純計算はできませんが、常識的な量(市販で売っているパイナップル1パックなど)であれば、飲み合わせについて過度な心配はいらないことが考えられます。
酵素活性の大きさを表す尺度のこと。
1 mg ≒ 2.5 FIP単位
(参考文献:Pineapple Enzyme (Bromelain))
ただし、飲み合わせを考える際は「パイナップルと薬の飲み合わせで注意が必要な成分②血液をサラサラにする薬」で解説したように短絡的な導き方はできないため、リスクがあるなら避けるという考え方が一般的です。
「薬とパイナップルは時間をあければ大丈夫?」薬剤師の回答
ブロメラインの効果持続時間について、情報はありません。
ブロメラインを主成分とする医療用医薬品でも、服用後に体の中でどのように働くか検討されておらず「当該資料なし」との記載です。
そのため、パイナップルを食べてからどのくらい時間を空けたら問題ないか、明確なデータがないため、パイナップルと薬との相互作用については一概には言えないが答えです。
ブロメラインを主成分とする薬においても、併用に注意を促している薬剤は抗凝固薬のみです(参考文献:ヘモナーゼ配合錠添付文書)。
一般的に吸収過程で薬との相互作用が考えられる場合は、薬の吸収が終わる時間(Tmax)以降であれば、吸収過程の相互作用は起こらないとされています。
しかし、薬の相互作用は吸収過程だけではないため、薬に応じた回答が必要となります。パイナップルと薬の飲み合わせについて考える際は、「パイナップルの酵素「ブロメライン」と薬の相互作用の仕組み」で解説したように吸収過程以外の作用も考慮しないといけません。
薬を飲んでいて飲み合わせに不安がある際は、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師を見つけておくと気軽に相談することができます。お薬手帳を利用して、気になる点を書き留めておくこともよい工夫といえるでしょう。
サプリメントでブロメラインを摂る場合の注意点と副作用
ブロメラインはパイナップルを食べる時よりも、サプリメントで摂取した場合の方が濃度は高くなります。
注意点としては、パイナップルにアレルギーのある人はブロメラインによりアレルギー反応を起こす可能性があります。
また、妊娠中や授乳中にブロメラインを服用した場合の安全性は、ほとんどわかっていません。
一部の薬との相互作用も報告されていますので、ブロメラインサプリメントを服用する際は、安全のため医師に相談しましょう。
なお、厚生労働省の情報によると、ブロメラインによる副作用はほとんど報告されておらず、もっとも多い副作用報告は胃のむかつきと下痢です(参考文献:ブロメライン|厚生労働省eJIM)。
ブロメラインのサプリとしての効果は、台湾のチームの研究ではブロメラインのコラーゲン分解作用が飛蚊症の治療に役立つかもしれないという報告もあります(台湾における3ヶ月間のパイナップルサプリメント摂取による硝子体浮遊物の薬理学的硝子体溶解:パイロットスタディ、J. Am Sci 2019)。
まだ研究段階のため、必ずしも効果があると解釈できない点に注意が必要です。
パイナップル以外に薬との飲み合わせに注意すべき果物・ジュース
高血圧の薬は柑橘系・グレープフルーツジュースに注意
薬との飲み合わせで注意が必要な飲食物として、よく知られているのがグレープフルーツジュースです。
グレープフルーツに含まれる成分が、一部の高血圧の薬や高脂血症治療薬などを分解する酵素の働きを妨げ、体外に排出しにくくなります。
これにより、薬の血中濃度が上昇し、薬の効果や副作用が強く出る可能性があります。
なお、グレープフルーツジュースの影響は数日続くため、同時服用は避け、薬の投与量を減らすなどの工夫が必要となります。
グレープフルーツ以外の柑橘類でも、ハッサクやブンタンなどは影響があるとする一方で、ミカンやレモンなどは影響がないと言われています。
セイヨウオトギリソウは多くの薬と飲み合わせに注意が必要
果物ではありませんが、ハーブの「セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)」を含む食品も、特定の薬剤の効果を弱める可能性があるため注意が必要です。
日本ではあまりなじみがありませんが、セント・ジョーンズ・ワートはドイツやヨーロッパ諸国を中心に、うつ病や精神障害の治療・サポートとして最も広く医療利用されています。
パイナップルと薬の飲み合わせに関するよくある質問(Q&A)
Q1.パイナップルを食べてはいけない薬はありますか?
現時点で「パイナップルを食べてはいけない」と禁止している医薬品はありません。
しかし、一部の抗生物質や血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)、抗結核薬などと併用すると、薬の効果に影響する可能性があります。
また、糖尿病の方は糖質制限があるため果物の摂取に関しては報告しておくと安心です。
果物としてたまに楽しむ程度であれば過剰に心配する必要はありませんが、日常的に食べている場合やブロメラインサプリメントを服用する場合は、医師に相談しましょう。
Q2. パイナップルは血圧を下げますか?
パイナップル自体に薬のように血圧を下げる働きはありません。
しかし、パイナップルには100gあたり150mgの「カリウム」が含まれています(参考文献:パイナップル|あすけん)。
カリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)を体の外に出し、血圧を下げる役割があります。
そのため、塩分の摂りすぎを調整し、高血圧の予防が期待できます(参考文献:カリウム|厚生労働省①、カリウム|厚生労働省②)。
ただし、ブロメラインによって薬の効果が変わる可能性があるため、降圧薬を服用中の方は医師に相談してください。
Q3. パイナップルは心臓に良いですか?
パイナップル(ブロメライン)の心臓や血管への影響について、確立した情報はありません。
心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者を対象にした試験も行われていましたが、研究段階の報告です(参考文献:糖尿病におけるブロメラインと心血管の危険因子 (BRCARDIO)|Good Clinical Practice NETWORK)。
まとめ|パイナップルと薬の飲み合わせで不安なときは自己判断せず専門家へ
パイナップルは美容と健康に良い影響をもたらす一方で、一部の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。
果物として少量を楽しむ程度なら問題ないと考えられますが、特定に薬剤を服用中の方が習慣的に食べたり、高濃度のサプリメントを服用したりする場合は注意が必要です。
「時間を空ければ大丈夫」「少しくらいなら平気」と判断すると、思いもかけない副作用や、薬の働きが強く出てしまう可能性があります。
大切なのは不安を感じた時は自己判断せず、専門家に相談することです。
是非かかりつけ医や薬局薬剤師などに相談し、安心しながらパイナップルを楽しみましょう。

パイナップルに含まれる酵素ブロメラインは消化促進などのメリットがある一方、一部の薬との相互作用に注意が必要です。特に抗生物質や抗凝固薬では、薬の作用が強まるリスクが示唆されています。果物として適量を楽しむ分には過度な心配はいりませんが、習慣的な摂取や高濃度のサプリメントを利用する際は、自己判断せずに専門家(医師・薬剤師)に相談することが重要です。日々の健康維持と薬の安全性を両立させるため、正しい知識を持ちましょう。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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