アトモキセチンは、注意欠如・多動症(ADHD)の治療に用いられる処方薬です(参考文献:ストラテラカプセル添付文書)。
一方で、集中力を高めたいという理由で「普通の人が飲むと頭が冴えるのではないか」といった誤解も散見されます。しかし、ADHDの診断がない人が服用しても能力向上は期待できず、むしろ眠気や意欲低下などの不調が報告されています。
この記事では、アトモキセチンの作用機序を整理した上で、普通の人が飲んだ場合に起こり得る変化やリスクを医学的根拠に基づいて解説します。
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目次
【結論】アトモキセチンを普通の人が飲むと「能力低下」する可能性大!
ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けていない普通の人(健常者)がアトモキセチンを飲んだ場合に、学習能力や仕事効率が向上するというデータはありません。どちらかというと、一部の認知機能の低下や、副作用によるパフォーマンス阻害の可能性が報告されています。
実際に、健常人に対して「スピーディーに正解すれば賞金がもらえる」というゲーム形式のテストを実施した研究があります。結果として、アトモキセチンを飲んだグループは、プラセボを飲んだ時と比較してミスを連発し、最終的に獲得できた賞金の総額が明らかに少なくなりました(参考文献:Acute Atomoxetine Selectively Modulates Encoding of Reward Value in Ventral Medial Prefrontal Cortex)。
これは、報酬のために頑張ろうとする脳の働きが、薬によって鈍くなってしまったことを意味します。このように、普通の人がアトモキセチンを飲むと頭が冴えるどころか、判断ミスといった「能力低下」が起こる可能性があるのです。
仕事効率のアップ
判断ミスの連発
アトモキセチンはADHDには有効だが普通の人には効果がない
「覚醒」ではなく「鎮静」?ノルアドレナリンの逆説的な作用
アトモキセチンは、脳内のノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害する、非中枢神経刺激薬に分類される薬です。ADHDではこの神経伝達が不足しているとされ、ノルアドレナリンの増加により効果を示すと考えられています(参考文献:ストラテラカプセル インタビューフォーム)。
一方、健常者ではノルアドレナリン量が基準値を超えやすく、過剰な刺激により神経活動を抑制する方向に働きます。覚醒を期待して服用したにもかかわらず、強い眠気やだるさに襲われ、かえって作業効率が落ちるケースが少なくありません。
ADHDの人の脳は機能的、構造的に違う可能性が指摘
画像研究では、ADHDの人では脳の働き方や発達の過程に違いが見られる可能性が報告されています(参考文献:ADHDのMRI研究―ADHDの神経生物学的基盤の解明に向けて―)。
特に、注意制御や衝動抑制に関与する部位を含め、診断のない人と比べて脳全体の情報処理のしかたに傾向の差が指摘されています。アトモキセチンは、こうした症状の改善を目的として使用されます。
一方で、脳の構造や機能に明確な偏りがない人が服用した場合、同様の効果は確認されていません。
ネットで見られるアトモキセチンを普通の人が飲んだときの副作用
インターネット上では、「気持ち悪くて動けなかった」「眠くなった」「頭がぼんやりした」という体験談が見られます。アトモキセチンは、消化器系の副作用を発現しやすい薬剤です。
医療関係者向け薬の説明書では、副作用の発現率が記載されており、主な副作用は次の通りです。
| 5%以上 |
悪心(吐き気) 31.5% 食欲減退 19.9% 腹痛、嘔吐、便秘、口渇 |
|---|---|
| 1~5%未満 | 下痢、消化不良、口内乾燥 |
| 5%以上 |
頭痛 15.4% 傾眠(眠気) 15.8% 浮動性めまい、不眠症 |
|---|
約3人に1人が吐き気を感じ、約5人に1人の割合で食欲がなくなっています。「頭がスッキリした」「落ち着いた」と言う報告も見受けられる一方で、普通の人が服用した場合、脳の覚醒というメリットを感じることなく、不快な身体症状だけが強く現れることになります。
「集中力を高めて作業をしたい」という目的で服用しても、激しい吐き気や眠気でデスクに向かうこと自体困難になる可能性も否定できません(参考文献:ストラテラカプセル添付文書)。
アトモキセチンを普通の人が飲むことでADHDかどうかわかる?
「アトモキセチンを飲んでみて、頭がスッキリしたら自分はADHDかもしれない」と、服用の反応により自己判断するのは間違いです。アトモキセチンを服用して「効いた」と感じても、それがADHDである証明にはなりません。薬を飲んだという思い込みによる可能性もあれば、副作用による活動性の低下を「落ち着いた」と勘違いする可能性もあります。
また逆に、飲んでも効果が見られなかったからADHDではないと判断するのも危険です。アトモキセチンの効果を感じるには、服用開始から2週ほどの時間を要するため、数回飲んだだけでは本来の効果が現れないことが多いからです(参考文献:ストラテラカプセル インタビューフォーム)。
診断は医師による問診、行動評価尺度などを総合して行われ、薬の反応だけで判定されることはありません。不安を感じる方は、医師の診察を受けましょう。
アトモキセチンを普通の人が譲り受けることは違法です
アトモキセチンは、医師の処方が必要な「処方箋医薬品」です。医師の処方箋なしに医薬品を譲渡・販売する行為は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に違反します。
無許可で医薬品を他人に譲渡した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(参考文献:指定薬物について|厚生労働省)。
安易な薬のやり取りは、法的にも健康的にも重大なリスクを伴う大変危険な行為です。
そもそもアトモキセチンの効果・効能!副作用はきつい?
アトモキセチンの効果
アトモキセチンは、脳内で情報を伝える物質の一つ「ノルアドレナリン」の働きを調整します。
神経細胞同士のすき間でノルアドレナリン量が適切に保たれることで、脳内の情報伝達が安定しやすくなります。その結果、ADHDの症状を改善します(参考文献:ストラテラカプセル添付文書)。
アトモキセチンの適応
適応は、「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」に限定されます。国内では、6歳以上の小児や18歳以上の成人を対象に有効性・安全性が確認されています。
アトモキセチンの副作用
主な副作用として、吐き気、食欲低下、眠くなる、頭痛、口が渇く、嘔吐、便秘、浮動性めまい、不眠症、体重減少、動悸、腹痛などが報告されています。
また、重大な副作用として、以下あげられます。
・肝機能障害、黄疸、肝不全:疲れやすい、体がだるい、皮膚や結膜が黄色くなる
・アナフィラキシー:全身のかゆみ、蕁麻疹、息苦しい
このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
アトモキセチンをやめるとどうなる?
ADHDの人が服用していたアトモキセチンを中止すると、症状が再発する可能性があります。アトモキセチンは依存性が低い薬とされていますが、自己判断で急に服用を中止することは推奨されません。
なお、中止する際は、急に服用を辞めるのではなく、徐々に投与量を減らしていくことが推奨されます。
実際に、アトモキセチンを短期間服用後に中止した場合の影響を検討した海外の試験では、小児においてのどの痛み、頭痛、発熱が、成人では頭痛、手足の痛み、下痢、副鼻腔炎、不眠症といった副作用(離脱症状)が報告されています(参考文献:Changes in symptoms and adverse events after discontinuation of atomoxetine in children and adults with attention deficit/hyperactivity disorder: a prospective, placebo-controlled assessment)。
自己判断で中止せず、医師の指示に従いましょう。
アトモキセチンは夜に飲むケースも朝に飲むケースもある
アトモキセチンの服用方法は、通常「1日2回(朝・夕)」または「1日1回」です(参考文献:ストラテラカプセル添付文書)。
また、食後すぐの服用が推奨されています。これは、薬の有効性・安全性を検討する臨床試験において、1日1回もしくは2回の服用で、効果や安全性が確認されたためです。
一方で、実臨床では生活リズムや副作用を考慮して、飲む時間を工夫することがあります。例えば、服用後に強い眠気や吐き気が出る患者の場合、活動時間帯への影響を避けるために「夕食後」や「就寝前」など、夜にまとめて服用するよう医師が指示するケースがあります。
逆に、不眠の副作用が出る場合に推奨されるタイミングは、朝の服用です。服用タイミングは医師が個々の体質等を見ながら決定します。決められた服用時間を守り、自己判断で服用時間を調節することは避けましょう。
「アトモキセチンを普通の人が飲むと」に関するよくある質問(Q&A)
Q1. アトモキセチンはどういう人が飲みますか?
専門医によりADHDと診断され、薬物療法が必要と判断された方が服用します。成人を対象とした臨床試験では、次のような人が対象とされました(参考文献:ストラテラカプセル インタビューフォーム)。
年齢や症状に応じて、投与量は調整されます。
Q2. アトモキセチンに危険性はありますか?
アトモキセチンの医療関係者向け薬の説明書(添付文書)には、小児及び青少年において「自殺念慮」のリスクが注意喚起されており、注意が必要です。
また、重大な副作用として、肝機能障害やアナフィラキシーがあげられます。一般的な副作用は、吐き気や食欲低下などの消化器系症状や、頭痛、めまいといった神経系の症状が報告されています。
服用は医師の指示に従い、適切に行いましょう。
Q3. アトモキセチンは鬱になる?
アトモキセチンの臨床試験において、抑うつ気分(0.6%)、うつ病(0.1%)が報告されています。
また、感情障害やせん妄、情動障害、気分変化といった副作用も0.1%報告されています。
アトモキセチンは脳内の神経伝達物質に作用するため、意図せず精神状態を不安定にさせる可能性も否定できません。
アトモキセチンを普通の人が飲んでも意味がない!正しい知識で薬は飲まないとリスクになる
アトモキセチンは、ADHD治療を目的とした薬です。普通の人が飲んでも、集中力などの能力が向上するような効果は得られません。
それどころか、吐き気や眠気などの副作用を伴い、認知機能やパフォーマンスを低下させるリスクが高いことがデータで示されています。
集中力低下やミスに悩んでいて「ADHDかもしれない」と強く疑われる場合は、自己判断で薬を入手しようとせず、心療内科や精神科を受診して専門医に相談してください。適切な診断と対処法を知ることが、悩みを解決する最短のルートです。

アトモキセチンはADHD治療に有効ですが、診断のない方が服用しても集中力向上などのメリットは得られません。むしろ過剰な刺激により、眠気や吐き気といった副作用を招き、パフォーマンスを低下させるリスクが医学的に示唆されています。薬機法に抵触する譲渡も厳禁です。安易な自己判断に頼らず、まずは専門医に相談し適切な診断を受けることが、健康維持の近道です。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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