2025/12/09
味の素が体に悪いは、誤解です。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議でも安全性が認められています(参考文献:味の素®の原材料は何?製法は?安全なの?|味の素株式会社)。また味の素は、サトウキビを発酵させてできる「グルタミン酸ナトリウム」を原材料とするうま味調味料です。
『味の素は体に悪い』というSNSの投稿を見て、ご家族(特に小さなお子様)の健康が不安になっていませんか?
なぜ、味の素が体に悪いと言われるようになったのか?、この記事では、薬剤師が『科学的な安全性』だけでなく、あなたが抱える『なんとなく怖い』『手抜きだと思われる罪悪感』といった感情的な不安まで解消します。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム
おかげさまで28年間、安心信頼の個人輸入代行・オオサカ堂のコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師資格保有者が監修。
目次
- 【結論】味の素(グルタミン酸ナトリウム)は体に悪い・やばいは嘘!科学的に安全性が証明
- 「味の素(グルタミン酸ナトリウム)は体に悪い」がデマといえる科学的な理由
- 味の素は体に悪い。やばいという誤解がなぜ生まれたのか?3つの歴史的背景
- 味の素が体に悪いとされる12の理由を薬剤師が科学的に徹底検証
- 理由1:味の素のグルタミン酸ナトリウムに発がん性がある?
- 理由2:味の素は脳に影響する「神経毒」って本当?
- 理由3:「覚せい剤の親戚」という話は本当?
- 理由4:味の素の成分が危険?原料が石油?
- 理由5:味の素は遺伝子組み換えの原料を使っている?
- 遺伝子組み換え技術の使用について
- 理由6:味の素の「アミノ酸等」という表示が危険?
- 理由7:味の素はアメリカなど海外では禁止?
- 理由8:味の素の社員は使わないって本当?
- 理由9:味の素を摂りすぎるとどうなる?過剰摂取のリスクは?
- 理由10:味の素で味覚がおかしくなる・味覚障害になる?
- 理由11:味の素は赤ちゃんや妊婦が食べても大丈夫?
- 理由12:味の素はアレルギーの原因になる?
- 味の素(グルタミン酸ナトリウム)が体に悪いがデマと理解しても、なぜ不安になるのか?
- 味の素との賢い付き合い方!実例と科学的な視点で料理を考える
- 味の素以外の調味料の安全性!「ほんだし」や「鶏ガラスープの素」も危険?
- 味の素が体に悪いに関するよくある質問(Q&A)
- まとめ:味の素は体に悪くない!正しい知識で情報をアップデートしよう
【結論】味の素(グルタミン酸ナトリウム)は体に悪い・やばいは嘘!科学的に安全性が証明
味の素が体に悪いというのは誤解です。
その安全性は、世界中の公的機関の研究により確認されています。
- 味の素の成分は「グルタミン酸ナトリウム」
- 1987年には国際的な食品添加物の専門機関であるJECFA(国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議)は、「グルタミン酸ナトリウムが人の健康を害することはない」と評価し、「一日の許容摂取量を特定しない」と結論付けています。
- 日本では、1960年に食品衛生法に基づいて安全と認められました。
(参考文献:味の素®の原材料は何?製法は?安全なの?|味の素株式会社)。
「味の素(グルタミン酸ナトリウム)は体に悪い」がデマといえる科学的な理由
SNSでも、「味の素(化学調味料)はなんとなく避けている」という健康意識の高い方の声をよく耳にします。しかし、味の素を避ける行為に根拠はあるのでしょうか?
- 「神経毒だ」
- 「発がん性がある」
- 「人工的で危険」
味の素の成分は、決して未知の化学物質ではありません。
その正体は、以下の2つの組み合わせです。
- これらは私たちの体内でも日常的に作られているアミノ酸の一種です。
- 現在の科学において、危険性は否定されています。
グルタミン酸ナトリウムにはADIの設定がない
このJECFAが、味の素の主成分(グルタミン酸ナトリウム)に対して下した評価が下記です。
特定しない
「分からないから保留」という意味ではありません。
あらゆる毒性試験を行った結果、極めて高い安全性が証明されたため、「制限値を設ける必要がない」という結論に至ったのです。
科学の世界では「制限がいらないほど安全な食品成分」として分類されています。
ADIは毎日食べても人体に害を及ぼさない量の基準
人間が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に悪影響が出ない量のこと。
通常は「これ以上はリスクがあるかもしれない」というラインが引かれます。
さらに1/100で設定
(国際機関のお墨付き)
味の素には「ナトリウム」が含まれているため、食塩と同様に摂りすぎれば高血圧のリスクになります。
ただし、それは「毒性」ではなく「塩分の摂りすぎ」の問題です。
味の素は体に悪い。やばいという誤解がなぜ生まれたのか?3つの歴史的背景

科学的に安全性が証明されているにもかかわらず、なぜ「味の素が体に悪い」と言われるようになったのでしょうか。
誤解を生んだ3つの歴史的背景が絡んでいます。
誤解の背景1:1960年代の「中華料理店症候群」という誤解
アメリカの中華料理店で食事をした後に、頭痛やめまい、動悸などが起こると報告され、「大量のグルタミン酸ナトリウム(MSG)」が原因として疑われました。
調査の結果、MSGの摂取と症状の間に明確な関係は認められないという結論に至っています。
- 塩分の過剰摂取
- ビタミンB6不足
- 酸化した油の影響
(参考文献:うま味調味料は体によくないのですか?【食品安全FAQ】|東京都保健医療局、Food Chem Toxicol. 1986 Apr;24(4):351-4.)
誤解の背景2:「化学調味料」という言葉の誕生とネガティブなイメージ
NHKの料理番組で商品名「味の素」を避けるために「化学調味料」という言葉が使われ始めました。当時は「化学」=先進的で良いイメージがありました。
公害問題などの発生により、「化学」という言葉にネガティブな印象が付着。
化学調味料=「人工的で危険な物質」というイメージが強まってしまいました。
誤解を解き、実態に即した表現にするため、現在の「うま味調味料」という名称に変更されました。
(参考文献:「味の素」はなぜ化学調味料と呼ばれることがあるの?|味の素株式会社)
誤解の背景3:メディアやSNSによる影響
味の素が体に悪いといわれる理由として、メディアやSNSによる影響も原因です。味の素論争としてしばしば議論にあがります。動画が「味の素との賢い付き合い方!実例と科学的な視点で料理を考える」にもあるので見てみてください。
- 累計1億3,500万部の料理マンガの作中で、「化学調味料のせいで日本人の味覚が鈍感になった」などの否定的なエピソードが描かれました。
- 物語の影響力は強く、多くの読者に「うま味調味料=悪」という認識を広める一因となりました。
- 最近でも、人気料理研究家の投稿が炎上するなど、議論の的になりやすい話題です。
- SNSなどで否定的な投稿を繰り返し目にすると、無意識のうちに「悪いもの」と評価してしまう心理が働きます。
ネガティブな情報ほど強く印象に残る心理。
社会的証明(Social Proof)
周りの意見に無意識に同調してしまう心理。
- 人はポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く反応し、記憶に残りやすい傾向を指します。
- たとえば、SNSなどで否定的な投稿を繰り返し目にすると、「悪いものなのでは?」と心理的に評価してしまう現象です。
- ある情報が多くの人に共有され認められていると、人はそれを真実や正しいことと認識しやすくなる心理現象
- メディアやSNS上の否定的なエピソードを繰り返し目にすることで、「それは悪いものだ」という認識が自分の中にも強くなるなどがあげられます。
(参考文献:社会情緒発達におけるネガティブバイアス)
(参考文献:迷った時は群衆に従う?明確な好みがない場合の社会的証明ナッジへの反応)
味の素が体に悪いとされる12の理由を薬剤師が科学的に徹底検証
味の素が体に悪いというのはあくまでも「ウワサ」。ここでは味の素が体に悪い理由として、SNSなどで取り上げられる12個の理由を薬剤師が科学的な視点で徹底検証します。

理由1:味の素のグルタミン酸ナトリウムに発がん性がある?
日本の食品衛生法でも味の素(MSG)は、安全性試験をすべてクリア。
味の素の原材料であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は、食品衛生法で規定された安全性試験をすべてクリアしています。
-
JECFA
(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)
国際的な食品添加物の専門機関 -
欧州共同体(EC)の食品科学委員会(SCF)
現在は解散。
EFSA(欧州食品安全性機関)が引き継ぎ、2015年に安全性を再確認
(参考文献:「うま味調味料「味の素®」」に関するご質問|味の素株式会社)
(参考文献:欧州委員会:グルタミン酸塩(E 620-625)の安全性再評価に伴うデータ提供要請文書 (PDF))
理由2:味の素は脳に影響する「神経毒」って本当?
これは、味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムが脳内で神経伝達物質として働くため、中毒性や依存性を生じる危険性があるという説です。
食事から摂取する量のMSGが、直接脳に影響を与えることは現実的ではありません。
過去の動物実験で神経への影響が報告されましたが、それは新生児ラットに「高用量を皮下注射」した結果です。
通常の「食事による経口摂取」では問題ないことが分かっています。
(FAO/WHO合同会議)
1987年以降、一貫して「ADI not specified(制限なし)」と結論。
毒性・疫学データに基づき、通常の食品使用量であれば健康リスクはないとしています。
(欧州食品安全機関)
2017年に再評価を実施。敏感な方へのリスクを考慮し、安全上限目安を30mg/kg/日と設定しましたが、通常摂取においては安全との評価を維持しています。
(米国食品医薬品局)
「GRAS(一般的に安全と認められる)」という分類を維持。
平均的な摂取量(約0.55g/日)では全く問題ないとしています。
EFSAは保守的アプローチで数値上限を設定しています。これはラットの反復投与毒性試験でNOAEL 3,200 mg/kg bw/dayを基に、不確実性係数100を適用してADIを算定しています。
(参考文献:MONOSODIUM GLUTAMATE SAFETY, NEUROTOXICITY AND SOME RECENT STUDIES)
(参考文献:EFSA(欧州食品安全機関):遺伝子組換え微生物を用いたグルタミン酸塩(E 620-625)の製造方法変更に関する安全性評価 (2015))
(参考文献:Questions and Answers on Monosodium glutamate (MSG) – FDA)



一般的な食事でのMSG摂取はこれらの高用量とは桁違いに低く、通常の摂取量では神経毒性は問題ないとわかります。また、人間の体には血液脳関門があり経口摂取物は血液脳関門で厳密に制御されています。口からの摂取では脳の濃度にはほとんど影響を与えません。
理由3:「覚せい剤の親戚」という話は本当?
味の素(MSG)と覚せい剤には、化学的にも製品の特性にも関連性は全くありません。
デマに騙されないように注意しましょう。
- アミノ酸の一種(たんぱく質のもと)
- トマト、チーズ、昆布などに自然に含まれる成分
- 体内で栄養として代謝される
- メタンフェタミン等
- 中枢神経を刺激する
- 依存性が強く厳格に規制されている
「構造が似ている」は科学的根拠のないデマです。
化学的にも製品の特性にも関連性は全くありません。
理由4:味の素の成分が危険?原料が石油?
味の素の歴史の認識誤認が一人歩きしていると思われます。味の素は現在、さとうきびから醤油や味噌と同じ製法で作られています。
原料は「さとうきび」
現在の原料は植物です。サトウキビから砂糖を絞ったあとの「糖蜜」を使用します。
発酵(はっこう)
糖蜜に発酵菌を加えます。これは醤油や味噌を作るのと同じ「発酵法」です。
結晶化して完成
発酵によってできたグルタミン酸を取り出し、結晶化させて製品になります。
※「石油から作られている」という情報は、この過去の事実が誤って伝わっているものです。
(参考文献:「味の素®」って石油から作られているの?|味の素株式会社)。
理由5:味の素は遺伝子組み換えの原料を使っている?
味の素はL-グルタミン酸ナトリウムの製造過程において、遺伝子組換え技術により開発された微生物が使われることがあります。しかし、厳しい審査基準をクリアしています。
遺伝子組み換え技術の使用について
味の素の製造工程で使用されることはありますが、以下の理由により製品の安全性は保たれています。
高度な精製・結晶化のプロセスを経るため、使用した微生物やタンパク質、不純物は除去されます。
最終的な製品から、遺伝子組み換え微生物そのものや不純物が検出されないことが確認されています。
日本の食品安全委員会において、健康への影響について「安全性に問題がない」と結論付けられています。
(参考文献:食品安全委員会が評価終了 遺伝子組み換え微生物利用で製造されたL-グルタミン酸ナトリウムなど2品目|バイテク情報普及会)。
理由6:味の素の「アミノ酸等」という表示が危険?
こんな表示を見たことがありませんか?
原材料名に「調味料(アミノ酸等)」とあるけど、アミノ酸以外に何が入っているか書かれていないから危険なのでは?
中身を隠しているわけではありません。これは日本の食品表示法で義務付けられているルールです。
複数の調味料を組み合わせて使う場合、個別の物質名ではなく一括名で書くことが決まっています。
主成分がアミノ酸で、そこに他の種類(核酸・有機酸・無機塩)が1つ以上混ざっている場合、「アミノ酸等」と記載します。
「アミノ酸以外に入っているものが書かれていないから危険なのでは?」と不安に感じるかもしれません。
しかし、この記載は日本の食品表示法で定められた正式な表記方法です。
(参考文献:食品衛生の窓|東京都保健医療局)。
理由7:味の素はアメリカなど海外では禁止?
「海外では禁止されているから危険」というのは事実無根です。
「味の素」の主成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は、世界中で安全性が認められ、広く使用されています。
-
アメリカ (USA)
食品医薬品局(FDA)が、MSGを「一般的に安全と認められる」GRAS(Generally Recognized As Safe)に分類しています。これは塩や胡椒と同じ、非常に高い安全レベルです。
-
ヨーロッパ (EU)
グルタミン酸一ナトリウムとして食品への使用が正式に認可されており、安全性に問題がないことが確認されています。
理由8:味の素の社員は使わないって本当?
「味の素の社員は味の素を使わない」というウワサもあるようですが、こちらもウワサの一人歩きの印象を受けます。
味の素株式会社の社員インタビューなどを見ると、自社製品への自信と誇りが伝わってきます(参考文献:社員インタビュー|味の素株式会社)。
また、本社には栄養バランスの取れた食事が提供される社員食堂があり、そこでは味の素の調味料も使えるようになっています(参考文献:味の素社の社員食堂に潜入!|味の素株式会社)。
理由9:味の素を摂りすぎるとどうなる?過剰摂取のリスクは?
JECFAは上限量の制限はなしとしています。国際的な機関の安全評価は「理由2:味の素は脳に影響する「神経毒」って本当?」も参考にしてください。
MSGが「ヒトの健康を害することはない」
そのため、グルタミン酸ナトリウム(MSG)の一日の許容摂取量を特定していません。
私たちが普段口にする料理に使われるMSGの量はごくわずかです。
この量であれば全く問題ありません。
一部の過敏な人が、「食事なし」でこれだけの量を一気に摂取した場合に限り、一時的な症状が出る可能性があります。
※現実的にはあり得ない量です。
一般的な料理では一食あたりに使われるMSGは0.5g未満であるため、このような状況は現実的ではありません(参考文献:Questions and Answers on Monosodium glutamate (MSG)|FDA)。
理由10:味の素で味覚がおかしくなる・味覚障害になる?
味の素に含まれるグルタミン酸ナトリウム(MSG)と食品に含まれるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は科学的に区別がつきません。
私たちは日常的に、調味料よりはるかに多い量のグルタミン酸を食品から摂取しています。
毎日摂取している量
使用量
(参考文献:Questions and Answers on Monosodium glutamate (MSG)|FDA)。
理由11:味の素は赤ちゃんや妊婦が食べても大丈夫?
味の素は赤ちゃんや妊婦が食べても問題ありません。
赤ちゃんや妊婦の場合は特に食の安全に気を使いますが、公式サイトでも「母体はもちろん胎児や乳幼児にも安全であることが確認されています。」と明記されています(参考文献:Q\&A 妊婦や乳幼児にも安心に使うことができますか?|味の素株式会社)。
味の素に含まれるグルタミン酸は母乳にも豊富に含まれています。
理由12:味の素はアレルギーの原因になる?
-
製品にアレルギー物質は含まれていません。
-
特定原材料に含まれません
グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、日本で表示が義務付けられているアレルギー特定原材料ではありません。 - アレルギーの原因になる可能性は低いため、もし反応を感じた場合は他の要因を疑うべきといえます。
豪州・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)は、一部の人で、大量に摂取すると過敏症反応(一過性のもの)を起こす恐れはありますが、深刻な影響を引き起こす科学的根拠はないとされています。
(参考文献:うま味調味料「味の素®」「アジパンダ®」瓶70g|味の素)。
(参考文献:食品安全関係情報詳細|食品安全委員会)。
味の素(グルタミン酸ナトリウム)が体に悪いがデマと理解しても、なぜ不安になるのか?


WHOやFDAといった国際機関が「味の素」の安全性を認め、12の具体的なウワサが科学的根拠に乏しいことを解説しました。
しかし、それでもなお「なんとなく怖い」、「できれば避けたい」という感情が、心のどこかに残っていないでしょうか。特に、大切なお子様やご家族の口に入るものとなれば、なおさらです。
なぜ私たちの心は、科学的な「事実」と「感情」の間で揺れ動くのか。その正体は、主に3つの心理的な要因にあります。
1. 「化学調味料」という言葉が持つ強力なイメージ
かつては「先進的」だった言葉が、時代の変化とともにネガティブな印象と結びつき、私たちの不安を増幅させています。
「化学調味料」という言葉が生まれた背景は「誤解の背景」の章でも解説しています。
2.「無添加」マーケティングによる無意識の刷り込み
スーパーで「無添加」「化学調味料不使用」という表示を目にすることで、不安が無意識に強化されます。
消費者庁の調査では、5割が「無添加」を選択。
そのうちの7割が、それを「安全で健康的だ」と誤って認識しています。
「使わない」ことをアピールする商品が多いことで、「使うことは良くないことなのだ」という刷り込みが日々行われているのです。
(参考文献:食品添加物表示に関する検討会報告書)。
3. 「危険」という情報の方が強く記憶に残る脳の仕組み
心理学でいう「ネガティビティ・バイアス」にも似ています。人間の脳は、「安全である」という100のポジティブな情報よりも、「危険かもしれない」という1つのネガティブな情報を強く記憶し、優先するようにできています。これは、危険を回避するための大切な生存本能です。
SNSで目にした「覚せい剤の親戚」 、「味の素は体に悪い」といった衝撃的なデマが、WHOのような国際的な専門機関の安全報告書よりも強く心に残ってしまいます。
4. 健康不安とは別の「罪悪感」というブレーキ
手間をかけてだしを取ること = 愛情
味の素を使うこと = 愛情のショートカット
この「後ろめたさ」こそが、科学的なデータを素直に受け入れにくくしている大きな原因です。
このように、私たちの不安は、事実(ファクト)とは異なる、言葉のイメージ、社会環境、そして心理的な要因が複雑に絡み合って形成されています。
この記事で12のウワサを一つずつ検証してきたのは、この「なんとなく怖い」という感情に科学的な視点で正しい知識を得るためです。
味の素との賢い付き合い方!実例と科学的な視点で料理を考える
「味の素」を使うことに罪悪感を抱く必要はまったくありません。本当の論点は、調味料の有無ではなく、最終的なお皿の上に「バランスの良い栄養があるか」です。「味の素」は、減塩効果や時短というメリットがあり、忙しい現代人の心強い味方です。
味の素はお寿司屋さんでも利用されている
味の素は家庭料理だけでなく、一般的な飲食店でも愛用されています。しばしばSNSで批判の対象にもなりますが、高級店でも使用されているという意見もあります。
料理研究家とうま味の追求。料理は科学
味の素論争といえば、堀江貴文氏とリュウジ氏がメディアではよく取り上げられます。科学としての料理という視点で、味の素について言及されているので興味がある方は御覧ください。
味の素のメリット!「減塩」という健康への貢献


グルタミン酸ナトリウムに含まれるナトリウム量は食塩の約1/3です。
うま味調味料を上手に活用すれば、減塩料理でも物足りなさを感じることなくおいしく食べられるという報告があります(参考文献:うま味調味料ってなんだろう?|日本うま味調味料協会)。
塩分を控えたい方にとっては、減塩のメリットは大きいでしょう。
「手抜き」ではなく「時短で賢い選択」。罪悪感を自信に変える考え方
味の素以外の調味料の安全性!「ほんだし」や「鶏ガラスープの素」も危険?
ほんだしも鶏ガラスープの素も安全!ポイントは「調味料(アミノ酸等)」
「味の素」の安全性が科学的に理解できても、他の調味料はどうなのか気になるでしょう。
特に「ほんだし」や「鶏ガラスープの素」といった、いわゆる「風味調味料」や「だし入り調味料」についても「体に悪いのでは?」という意見があります。
「ほんだし」や「鶏ガラスープの素」も、適切に使用する範囲で健康への悪影響はありません。
うま味そのもの
- グルタミン酸ナトリウム(昆布のうま味成分)
🐟 ほんだし / 🐔 鶏ガラスープの素
塩・砂糖・だしエキスを合わせた「複合調味料」です。
- 塩、砂糖
- かつお節や鶏のエキス
- 調味料(アミノ酸等)
味の素にしてもほんだしにしても、鶏ガラスープの素も。製品の原材料表示を見ると、多くの場合「調味料(アミノ酸等)」という表記があります。
ウワサ6でも解説したように、「アミノ酸等」こそ、「グルタミン酸ナトリウム(味の素の主成分)」や、かつお節に含まれる「イノシン酸」、しいたけに含まれる「グアニル酸」など、安全性が確認された「うま味」成分のことです。
主な風味は「かつお節の粉末やエキス」です。それに「調味料(アミノ酸等)」を加えることで、だし本来のうま味を安定させ、補強しています。
主な風味は「チキンエキス」です。それに「調味料(アミノ酸等)」を加え、スープのうま味とコクを深めています。
ほんだしも鶏ガラスープの素も「危険な何か」を隠しているわけではなく、「塩・砂糖・風味原料(鶏や鰹)・うま味成分(アミノ酸等)」をバランスよく配合した製品です。
安全性を気にする上で本当に注意が必要なのは「塩分」
健康観点からのアドバイスとしては、「アミノ酸」よりも「食塩相当量(ナトリウム)」に注意が必要です。
ほんだしや鶏ガラスープの素のような複合調味料は、味が完成されている分、食塩の含有量が比較的多い傾向にあります。
複合調味料は味が完成されている分、食塩が多く含まれます。
日本人は男女ともに、目標量より約3gも多く塩分を摂取しています。
「塩分を摂りすぎないように注意する」
という視点が、健康を守る鍵となります。
「ほんだし」や「鶏ガラスープの素」は、それ自体が体に悪いわけでは決してありません。しかし、これらを便利に使うあまり、気づかぬうちに塩分(ナトリウム)の総摂取量が過剰になってしまう。それこそが、高血圧などの生活習慣病のリスクとして、本当に気をつけるべき点です。
日本人の食事摂取基準(2025年版)は高血圧予防など健康リスク軽減を目的として策定されていますが、実際の栄養調査では、男女ともに1日の摂取量が3g程度オーバーしているのがわかります。
(参考文献:栄養摂取状況調査の結果)
(参考文献:日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント)
味の素が体に悪いに関するよくある質問(Q&A)
Q1. 「ハイミー」も味の素と同じですか?体に悪いのでしょうか?
A1.
「ハイミー」と「味の素」は主成分が同じグルタミン酸ナトリウムであり、どちらも科学的に安全性が確認されていますので、体に悪いということはありません。ただし、成分の構成が少し異なります。
「味の素」がグルタミン酸ナトリウムを主成分とするのに対し、「ハイミー」はそれに加えて、かつお節のうま味成分である「イノシン酸ナトリウム」としいたけのうま味成分である「グアニル酸ナトリウム」を配合した、より複合的なうま味調味料です。
料理に深みやコクを与えたい場合に適しており、いわば「うま味の合わせだし」のような役割を果たします。どちらも適切に使用すれば、料理をより豊かにしてくれる安全な調味料です。
Q2. 塩と混ざっている「アジシオ」も安全ですか?
A2.
はい、「アジシオ」も安全な製品です。「アジシオ」は、食塩に「味の素」をコーティングしたもので、塩味とうま味を一度に加えることができる便利な調味塩です。
主成分は食塩とグルタミン酸ナトリウムであり、これまでに解説してきた通り、どちらも安全性が確認されています。塩と「味の素」を別々に振る手間が省けるため、ゆで卵や天ぷら、おにぎりなどに手軽に使えます。
ただし、食塩が主成分ですので、ナトリウムの摂りすぎには注意が必要です。減塩を心がけている方は、使用量にご注意ください。
Q3. もし味の素を使わない場合、代わりになるものはありますか?
A3.
もし「味の素」を使わずにうま味を加えたい場合は、以下の食材や調味料が代わりになります。
- 昆布だし グルタミン酸が豊富です。
- かつお節 イノシン酸が豊富です。
- 干ししいたけ グアニル酸が豊富です。
- トマト・チーズ・味噌 これらもグルタミン酸を多く含んでいます。
- 昆布茶 手軽にグルタミン酸のうま味を加えられます。
- だしパック 昆布やかつお節などが粉末状になっており、手軽に本格的なだしが取れます。
- 塩麹(しおこうじ) 発酵の力で生まれたうま味と塩味を同時に加えられます。
ご自身のライフスタイルや料理に合わせて、うま味を上手に取り入れていきましょう。
まとめ:味の素は体に悪くない!正しい知識で情報をアップデートしよう
味の素は体に悪いというのは完全な誤解です。
主成分であるグルタミン酸ナトリウムの安全性は、国際的な専門機関によって証明されています。
グルタミン酸ナトリウムはトマトやチーズなどに含まれる、うま味のもととなるアミノ酸です。
不確かな情報に左右されず、正しい知識をもとに判断することが重要です。
味の素を上手に取り入れることで減塩や時短に繋がり、家族とのだんらんの時間を有意義に過ごせます。
自信をもっておいしい食事を楽しんでください。


この記事では「味の素」が体に悪いというウワサについて、科学的根拠に基づき解説しました。主成分の安全性は国際的にも認められています。過去の経緯から誤解されがちですが、減塩や時短に役立つ点は大きなメリットです。もちろん、これに頼りすぎずバランスの取れた食事が基本です。正しい知識を持ち、罪悪感なく日々の料理に賢く活用していきましょう。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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