2025/07/28
海外旅行先や通販サイトで「メラトニンサプリ」を目にしたことはありませんか。
「睡眠の質を高める」と聞き、試してみたいと思っても、日本のドラッグストアや薬局では見かけません。「なぜ日本では売っていないの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
その理由は、日本ではメラトニンが「サプリメント」ではなく、「医薬品」として厳格に管理されているからです。(参考文献:メラトベル顆粒小児用0.2%/メラトベル錠小児用1mg/メラトベル錠小児用2mg 添付文書|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
この記事では、専門家である薬剤師が「メラトニンサプリが日本で発売されない理由」を、法律の観点から分かりやすく解説します。

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目次
メラトニンとは?基本情報
「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニン。
私たちの体内で自然な眠りを誘うために、どのように働き、どうやって分泌されているのでしょうか。
この章では、メラトニンが持つ体内時計を整える役割や、加齢との関係など、知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。
松果体とメラトニン分泌のメカニズム
メラトニンは、脳の中心部にある「松果体(しょうかたい)」という小さな器官から分泌されます。この分泌は、目から入る光の量によって巧みにコントロールされています。
朝、太陽の光を浴びると、その光の情報が網膜から脳へ伝わり、松果体からのメラトニンの分泌が抑制されます。また、セロトニンが分泌されることにより、心身が活動モードに切り替わります。一方、夜になり周囲が暗くなると、光の刺激が減るため、松果体は活発にメラトニンを分泌し始めます。血中のメラトニン濃度が高まることで、体は「休息の時間だ」と認識し、深部体温がわずかに低下するとともに、自然な眠気が誘発されるのです。
寝る前にスマホの画面を見ると寝つきが悪くなるといわれるのは、ブルーライトによる光の刺激が「まだ昼だ」と体に錯覚させ、メラトニンの分泌を抑制することに由来します。
この仕組みから、「朝にしっかりと光を浴び、夜は強い光を避ける」という生活習慣が、質の高い睡眠のために非常に重要であることがわかります。
(参考文献:“臓器の大きさを決める!” メカニズム解明へ|大阪大学)
加齢による分泌量の低下と睡眠障害
メラトニンの分泌量は、一生のうちで大きく変動します。思春期にピークを迎え、その後は年齢とともに徐々に減少していくことが知られています。特に高齢になると、松果体の機能低下などにより、夜間のメラトニン分泌量が大幅に減少します。
この加齢に伴うメラトニンの分泌低下は、高齢者によく見られる睡眠障害の一因と考えられています。「寝つきが悪くなる(入眠障害)」「夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)」「朝早くに目が覚めてしまう(早朝覚醒)」といった悩みが、このホルモンバランスの変化と深く関係しているのです。そのため、保険適用外ではありますが、不足したメラトニンの働きを補うことで、睡眠障害を改善しようという治療アプローチが存在します。
(参考文献:老年期の睡眠障害の病態と治療|精神神経学雑誌オンラインジャーナル)
メラトニンサプリが日本で発売されない理由
海外ではサプリとして常識のメラトニン。なぜ日本では店頭にないのでしょうか。
この記事の核心である「メラトニンが日本で発売されない理由」を解説します。日本の法律では「医薬品」と定められている、その明確な根拠と背景に迫ります。
日本では「医薬品」に分類される(薬機法上の扱い)
結論から言うと、日本ではメラトニンは「食品(サプリメント)」ではなく、「医薬品」に分類されるからです。
日本の法律「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称:薬機法)では、人の体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的としたものは「医薬品」と定義されています。
メラトニンは、先述の通り、睡眠や体内時計を調整する「ホルモン」であり人の体の機能に大きな影響を与えます。そのため、薬機法の定義に基づき、日本では医薬品として扱われ、厚生労働省の承認なく製造・販売することはできません。
さらに、現在、メラトニンは医療用医薬品としてのみ承認されており、その唯一の医薬品が「メラトベル」です。ただし、小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善を効能として承認されているため、成人の一般的な不眠症への使用は認められていません。また、メラトニンの市販薬も承認されていないため、薬局やドラッグストア等で購入することはできません。
また、成人に対する不眠症の治療薬として、メラトニン類似の構造を持つ成分である「ラメルテオン」が日本で承認されています。しかし、こちらもメラトニン同様、医療用医薬品としてのみの承認のため、市販で購入することはできません。
一方、サプリメントは法律上「食品」の一種です。あくまで食生活で不足しがちな栄養成分を補うのが目的であり、体の機能を積極的に変化させるような医薬品的な効果を謳うことは許されていません。この明確な線引きこそが、メラトニンサプリが日本の店頭に並ばない理由です。
(参考文献:メラトベル顆粒小児用0.2%/メラトベル錠小児用1mg/メラトベル錠小児用2mg 添付文書|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
メラトニンサプリの個人輸入は可能
「日本では買えないなら、海外から個人輸入すればいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。
結論としては、メラトニンサプリの個人輸入は可能です。
ただし、医薬品の扱いとなるため、規定の範囲内の数量に限られます。メラトニンの場合、処方箋薬の成分に該当するため、用法・用量からみて1ヶ月分以内となります。

弊社オオサカ堂でもメラトニンを含有するサプリや医薬品の取り扱いはありますが、上記の厚生労働省の通知を厳守しているため、輸入できる数量は用法・用量からみて1ヶ月分以内としています。
また、海外渡航先からの医薬品の携帯による持ち込みに関しては、自己の疾病の治療に用いる場合であっても、医薬品によっては医師の診断書などの書類や事前の許可申請を求められることがあるため、注意が必要です。
(参考文献:海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて【厚生労働省医薬局】)
メラトニンの副作用として生殖機能に影響がある?
動物実験ではメラトニンが性腺刺激ホルモンを抑制し、生殖腺の発達を遅延させるという知見があります。
一方、抗酸化作用を利用して卵子の質を改善し、不妊治療成績を向上させる報告も存在し、作用は複雑です。
ヒトにおいては用量・投与期間が限られれば深刻な生殖毒性は確認されていませんが、長期的データは依然として不足しています。
妊娠中・授乳中の摂取は、現時点では「安全とは言い切れない」ため、必ず主治医に相談すべきです。
(参考文献:メラトニン 2.6.6 毒性試験の概要文 |独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
メラトニンサプリが日本で発売されない理由に関するよくある質問
Q1. なぜアメリカなど海外では、メラトニンがサプリとして普通に売っているのですか? A1. 国によって、サプリメント(食品)と医薬品の法的な定義や規制が異なるためです。例えば、アメリカでは、1994年に施行されたDSHEA法(栄養補助食品健康教育法)により、ホルモンであってもサプリメントとして販売することが比較的容易になっています。一方、日本は人の機能に影響を与える成分は医薬品として管理するという考え方を採用しており、どちらが良いというよりも、国民の健康を守るための思想の違いと言えます。
(参考文献:Dietary Supplements | U.S. Food and Drug Administration)
Q2. 日本でメラトニンや、それに似た薬を手に入れる方法はありますか?
日本では、メラトニンそのものではなく、メラトニンが作用する「受容体」という部分に選択的に働きかけることで、自然な眠りを促す成分「ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬)」が不眠症の治療薬として承認されています。処方薬のため、まずは睡眠外来や心療内科、精神科などで専門医に相談することをお勧めします。また、メラトニン同様、個人輸入代行業者を介した個人輸入も一つの選択肢となります。
Q3. メラトニン以外で、市販で買える睡眠を助けるものはありますか?
睡眠改善薬
ドラッグストアで購入できるOTC医薬品で、主にアレルギー薬の副作用(眠気)を応用したものです。一時的な不眠には有効ですが、長期連用は推奨されません。
機能性表示食品など
グリシン、L-テアニン、GABAなど、睡眠の質向上をサポートする成分を含んだ食品が市販されています。これらはあくまで食品であり、医薬品ほどの強い作用はありません。まずは、メラトニンなどの医薬品成分を含まない、栄養バランスを整えるサプリメントで睡眠習慣の土台を整えることも、有効な選択肢の一つといえます。
まとめ:メラトニンサプリは日本では医薬品扱い
日本では、メラトニンは「医薬品」と定められており、サプリメントとして市販することは法律で認められていません。
メラトニンの服用を検討する場合、まずは医師や薬剤師といった身近な専門家にご相談ください。
それが、ご自身の健康を本当に大切にする、最も安全で確実な第一歩となるはずです。

メラトニンは、私たちの「眠り」と深く関わるホルモンであり、睡眠に悩む多くの方々に注目されている成分です。しかしながら、日本国内ではメラトニンは「医薬品」に該当するため、サプリメントとしては流通していません。本記事を通じて、メラトニンの正しい知識を深めていただくとともに、ご自身の睡眠習慣を見直すきっかけになれば幸いです。睡眠の悩みは放置せず、必要に応じて医療機関への相談をご検討ください。
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