痰をやわらかくして排出を助けるアンブロキソールは、医療用医薬品や市販薬でも広く使われています。
医療関係者向け薬の説明書(添付文書)には、一緒に飲んではいけない薬(併用禁忌)や注意が必要な薬(併用注意)はありません(参考文献:ムコソルバン添付文書|PMDA)。
基本的には安全性の高い薬と言えますが、自己判断で他の薬と併用すると、思わぬリスクにつながる可能性があります。
また、「アンブロキソールを飲むと咳が増える」と言われることもあり、不安に感じる方もいるでしょう。
この記事では、アンブロキソールの飲み合わせに関する注意点と、痰切りの薬を飲んでどうして咳が増えるのか、オオサカ堂 コンテンツ制作チームが解説します。

【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム
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目次
【結論】アンブロキソールに絶対的な併用禁忌はないが「注意」は必要
アンブロキソールは、痰をやわらかくして線毛運動を活発にし、気道から痰を出しやすくする薬です。
また、副鼻腔の粘液分泌を正常化させることで、慢性副鼻腔炎に伴う膿や鼻水の排出を促します。
医療関係者向けの薬の説明書(添付文書)には、一緒に服用することが禁止されている「併用禁忌」の薬は記載されていません(参考文献:ムコソルバン添付文書|PMDA)。
これは、アンブロキソールが他の薬剤と重大な相互作用を起こすリスクが低いことを示しており、安全性の高い薬と言えます。
その一方で、併用により効果が重複したり、作用を打ち消し合ったりする薬もあります。
そのため、併用禁忌はないとされていても、他の薬と併用する際は注意が必要です。
「禁忌(きんき)」と「注意」の明確な違い
薬の併用には、「併用禁忌」と「併用注意」という2つの区分があります(参考文献:飲み合わせの悪い薬剤について(例)|厚生労働省)。
併用禁忌は、一緒に飲むと深刻な健康被害を生じる可能性や、治療効果の低下につながるおそれがあるため、併用が禁止されている組み合わせです。
一方、併用注意は、薬の効き方に影響を与える可能性や、副作用があらわれやすくなる可能性があるため、併用する際に注意が必要な薬の組み合わせを言います。
自己判断での併用を避けるべき理由
自己判断で薬の併用を避けるべき理由のひとつは、有効成分が重複し、効果や副作用が強く出るリスクがあるためです。
アンブロキソールは医師の診察により処方される医療用医薬品ですが、一部の市販薬にも有効成分として配合されています。
そのため、アンブロキソールを服用中の方が、該当する市販薬を併用すると、知らないうちにアンブロキソールを過剰に服用してしまう可能性があります。
リスクを避けるために、併用の際は医師や薬剤師に相談しましょう。
アンブロキソールとの飲み合わせで注意すべき薬
アンブロキソールの添付文書には、併用に関する注意喚起はされていません。
そのため、基本的には安全性の高い薬と言えますが、併用する薬によっては注意が必要となることがあります。
代表的な例として、咳止めと一緒に飲むと、痰を外に出すための咳反射が抑えられ、かえって症状を長引かせてしまうおそれがあります。
また、一部の抗生物質では、併用により肺や気道粘液中での抗生物質の濃度が上昇する可能性が指摘されており、自己判断での服用はおすすめできません。
さらに、市販されている総合感冒薬や鼻炎薬には、抗ヒスタミン薬やアンブロキソール自体を含んでいるため、効果の打ち消しや、成分を過剰に摂取してしまうリスクがあります。
他の薬を併用する際は、服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。
1.鎮咳薬(咳止め)
アンブロキソールは、痰を体の外に出しやすくする痰切りの薬(去痰薬)です。
粘り気の強い痰をサラサラにし、喉の奥へ運ぶ働きを助けます。
結果として、痰が気道壁にくっつきにくくなり、排出しやすい状態になります(参考文献:アンブロキソール塩酸塩|エスエス製薬)。
一方で鎮咳薬は、咳反射を抑えることで咳の回数を減らす薬です。
この2つを併用すると、痰を外に出すための咳反応が抑えられて、痰が気道に残る可能性があります。
痰が気道内にとどまると、感染症が悪化するリスクもあるため、理論的には併用は避けた方が安心です。
ただし、実際の臨床現場では痰を出しやすくする去痰薬と、咳そのものを抑制する鎮咳薬を併用することはよくあります。これは、痰が絡むことによって引き起こされる咳を悪化させないための組み合わせです。
2.抗生物質
アンブロキソールと抗生物質は、比較的併用されやすい組み合わせです。
しかし、アモキシシリンやエリスロマイシンなど特定の抗生物質との併用は、肺や気道粘液中で抗生物質の濃度が上がる可能性が報告されています(参考文献:Deretic V, , et al.:Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2019 Mar;15(3):213-218.)。
併用により抗生物質の効果が強く出る可能性も考えられますが、現時点では明確な結論に至っていません。
抗生物質の効果を期待して、自己判断で併用するのはリスクを伴うため避けるべきです。
3.市販の総合感冒薬・鼻炎薬
市販薬を併用する際は、有効成分の重複に注意しなくてはなりません。
多くの総合感冒薬や咳止め薬にはアンブロキソール塩酸塩が含まれているため、知らないうちに過剰服用につながる可能性があります。
さらに、総合感冒薬や鼻炎薬の多くは、鼻水を止めるために「抗ヒスタミン薬」を含んでいます。
特に第一世代の抗ヒスタミン薬は気道粘膜での粘液分泌を抑制し、痰が出にくくなることがあるため、アンブロキソールとの併用に注意が必要です。
「アンブロキソールで咳が増える」と言われる理由と正しいメカニズム
アンブロキソールを飲むと、かえって咳が増えると言われることがあります。
これは、薬が効果を発揮しているために起こる、体の自然な反応です。
アンブロキソールは、
①痰と気道粘膜の潤滑油として働く肺サーファクタントの分泌を促し、粘り気の強い痰をやわらかくする
②線毛運動を活発にして、痰を喉の奥に運ぶ助けとなる
という2つの働きがあります。
この作用によって、絡んでいた粘り気の強い痰が喉の奥に運ばれ、体外にスムーズに排出されやすくなります。
その過程で痰を体外に出そうと咳反射が起きるため、咳の回数が一時的に増えるのです。
アンブロキソールにより咳が増えるのは副作用ではなく、薬が正しく働いているためと考えられます。
アンブロキソールで鼻水が止まらないのはなぜ?
アンブロキソールを服用すると、鼻水が止まらないと感じることがあります。
薬の働きにより、粘り気が強く硬い鼻水をやわらかくするため、鼻がかみやすくなり、結果として鼻水が止まらないと感じるためです。
アンブロキソールは痰の排出以外にも、「慢性副鼻腔炎の排膿」という効果があります。
慢性副鼻腔炎でみられる症状のひとつは、鼻の奥に粘り気の強い鼻水や膿がたまり、排出されにくい状態です(参考文献:アレルギー反応i|サノフィ)。
アンブロキソールは、鼻や副鼻腔の粘液分泌物を整え、線毛運動を高めることでたまった膿や粘り気の強い鼻水を出しやすくします。
結果として鼻をかみやすくなり、排出が進むことで鼻水が止まらないと感じるのです。
【禁忌】アンブロキソール飲み合わせに関するQ&A
Q1. 風邪薬と併用しても良いですか?
A.市販の風邪薬との併用には、注意が必要です。
多くの市販薬には、アンブロキソール塩酸塩が含まれており、重複して服用すると過剰服用につながる可能性があります。
風邪薬を併用する際は、パッケージの成分表を確認しましょう。
飲み合わせに不安がある場合は、医師または薬剤師・登録販売者にご相談ください。
Q2.アルコール(お酒)を飲んでも良いですか?
A.アンブロキソールとアルコールとの飲み合わせについて、注意喚起はされていません。
しかし、一般的に薬の服用中の飲酒はおすすめできません。
アルコールにより、予測しなかった薬の効果や副作用があらわれる可能性があるためです。
安全に服用するためには、原則としてアルコールは避けた方が良いでしょう。
どうしてもお酒を飲みたい場合は、アンブロキソールを服用後2時間あけて飲むようにしましょう。
Q3.妊娠中や授乳中に飲んでも大丈夫ですか?
A.妊娠中のアンブロキソールの安全性は確立していません。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療で必要と判断された場合に限って投与されます。
また、動物実験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されています。
アンブロキソール服用中の授乳については、必ず医師と相談の上で服用してください。
いずれの場合も自己判断で服用せず、医師又は薬剤師に相談しましょう。
まとめ:アンブロキソールの飲み合わせで、禁忌はないが注意は必要
アンブロキソールは、去痰薬として広く使われており、添付文書上は「併用禁忌」とされる薬はありません。
基本的には安全性の高い薬ですが、他の薬と併用する際は注意が必要です。
たとえば、咳止めや抗ヒスタミン薬を含む市販薬と併用すると、アンブロキソールの効果が弱まる可能性があります。
また、アンブロキソール服用により、咳が止まらなくなり鼻水が増えることがあります。
これは、薬の働きでやわらかくなった痰や鼻水が、体外に排出しやすくなるためで、薬が効いている過程で起こりうる反応です。
薬を服用する際は、飲み合わせについて医師や薬剤師に相談することで薬剤同士のリスクを回避できます。
自己判断での併用は避け、安全で効果的な治療により早い回復を目指しましょう。

アンブロキソールは併用禁忌がなく、副作用も少ないため、きわめて安全に服用できる薬です。実際の臨床現場でも、多くの薬と組み合わせてよく用いられています。アンブロキソール服用中の咳の増加も「効果発現ゆえに起こる作用」ということがご理解いただけたのではないでしょうか。しかし、特に市販の風邪薬や咳止めとの併用は、意図せぬ成分重複による過剰服用や、かえって症状を悪化させる恐れがあるため注意してください。この記事が、皆様の健康管理の一助となれば幸いです。
監修・オオサカ堂 コンテンツ制作チーム
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