乳酸アシドーシスの初期症状(吐き気などの消化器症状、だるさ、筋肉痛)が生じた場合は、すぐに受診が必要です(参考文献:乳酸アシドーシスについて)。
あなたが糖尿病のお薬(メトホルミン)を服用中であれば、ちょっとした症状を感じたときに、「ただの風邪だろうか?」「それとも、病院や薬局で説明された副作用…?」と悩んでしまうかもしれません。
薬剤師としては、「初期サインを見逃さないことが大切である」と患者さんに説明します。そのため、あなたが感じたちょっとしたサインに注目することは非常に重要なことです。
この記事では、単に症状を羅列するだけでなく、あなたが今感じている症状が本当に危険なサインなのかをどう見分けるか、そして体調が悪い時に薬をどうすべきかという、具体的な行動基準を薬剤師の視点から、わかりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、漠然とした恐怖が「何をすべきか」という明確な行動に変わり、安心して日々の治療と向き合えるようになっているはずです。
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目次
【結論】乳酸アシドーシスの症状「吐き気、だるさ、筋肉痛」の放置は危険!今すぐ対処
「吐き気・嘔吐」、「体のだるさ(倦怠感)」、「筋肉痛」といった症状が、特に糖尿病治療薬のメトホルミンを服用中に現れた場合、それは「乳酸アシドーシス」という、命に関わる重篤な副作用の初期症状である可能性があります (参考文献:乳酸アシドーシスについて)。
乳酸アシドーシスは、体内に乳酸という物質が異常に蓄積し、血液が酸性に傾いてしまう危険な状態です。発生頻度は低いものの発症すると進行が速く、治療が遅れた場合の致死率は約25%と報告されている、非常に注意が必要な副作用です(参考文献:乳酸アシドーシスの原因とリスク)。
「いつもと違う」「ただの風邪や疲れとは何か違う気がする」と感じたら、決して自己判断で様子を見ないでください。 すぐにかかりつけの医師や薬局に連絡するか、夜間や休日であっても救急外来を受診する必要があります。
乳酸アシドーシスとは?初期症状セルフチェックリスト
そもそも乳酸アシドーシスとは、どのような状態なのでしょうか。簡単に言うと、体の中でエネルギーを作る過程で生じる「乳酸」という物質が、何らかの原因で異常に増えすぎてしまい、血液が酸性に傾いてしまう状態です(参考文献:乳酸アシドーシスについて)。
血液が酸性になると、体の様々な機能が正常に働かなくなり、重篤な場合は命に関わります。
症状を客観的に評価するために、まずは以下のチェックリストで確認してみましょう。
- 胃腸の不調: 原因不明の吐き気、嘔吐、下痢、腹痛がある
- 全身のだるさ: 十分に休んでも取れない、強い倦怠感や疲労感がある
- 筋肉の痛み: 運動をしていないのに、筋肉痛や筋肉のけいれんが起きる
- 食欲の低下: いつものように食事がとれない、または全く食欲がない
- 呼吸の変化: 呼吸が速くなる、息苦しさを感じる(過呼吸)
- 意識の変化: 頭がぼーっとする、考えがまとまらない
(参考文献:乳酸アシドーシスの症状)
乳酸アシドーシスが進行すると、脱水、低血圧(血圧が異常に下がること)、低体温(体温が異常に下がること)、さらには昏睡といった、より深刻な状態へと移行する可能性があります。大切なのは、これらのサインを見逃さず、初期の段階で対処することです。
乳酸アシドーシスの症状と似てる?風邪や疲れと「危険なサイン」を見分ける3つのポイント
最も不安に感じるのは、「この症状が、ただの風邪やいつもの疲れとどう違うのか?」という点でしょう。薬の副作用は心配だけれど、毎回病院に行くのも大変です。ここでは、その見分け方の重要なポイントを3つに絞って解説します。
胃腸症状(吐き気・下痢)の見分け方
メトホルミンを飲み始めた頃に、軽い吐き気や下痢を経験される方は少なくありません 。飲み始めから2週間くらいは、下痢症状を訴える患者さんを実現場でもよく見ます。
これは薬の一般的な副作用の一つです。しかし、乳酸アシドーシスのサインとなる胃腸症状には、明らかな違いがあります。
危険なサインの特徴:
- 突然、かつ激しく始まる:
「何か変なものを食べたかな?」と思うような、経験したことのない強い吐き気や腹痛が突然現れます。 - 持続・悪化する:
普通の副作用なら数日で慣れてくることが多いですが、乳酸アシドーシスの場合は数時間から数日経っても改善せず、むしろ症状が悪化していく傾向があります。 - 食事や水分が全く摂れない:
嘔吐がひどく、水分補給すら困難になるほどの状態は非常に危険です。脱水が進むと、さらに乳酸アシドーシスが悪化する悪循環に陥ります。
(参考文献:乳酸アシドーシスの症状)
もし、「いつもの副作用とは明らかに違う」、「どんどんひどくなっている」と感じたら、それは放置してはいけない危険なサインです。
倦怠感・筋肉痛の見分け方
仕事や運動による「疲れ」と、乳酸アシドーシスによる「倦怠感・筋肉痛」も、非常に区別がつきにくい症状です。無理をしたときのだるさとは、どう違うのでしょうか。
危険なサインの特徴:
- 休息しても全く回復しない:
一晩しっかり寝ても、全く疲れが取れない、むしろ朝から体が鉛のように重く、起き上がるのもつらい、といった異常なだるさが特徴です。 - 原因不明の筋肉痛:
特に激しい運動をしたわけでもないのに、全身の筋肉が痛む、脚がつる(こむら返り)回数が増える、といった症状が現れることがあります。 - 他の症状を伴う:
この異常な倦怠感や筋肉痛に加えて、前述のような激しい胃腸症状や食欲不振も同時に現れている場合は、特に注意が必要です。
(参考文献:乳酸アシドーシスの症状)
通常の疲労であれば、休息や栄養補給によってある程度は回復するはずです。全く回復の兆しが見られない「異常なだるさ」や「原因不明の筋肉痛」は、体が発しているSOSサインといえます。
呼吸の変化に注意
乳酸アシドーシスのサインの一つに「呼吸の変化」があります。体内に溜まった乳酸によって血液が酸性に傾いた状態を、体がなんとか元に戻そうとして、原因物質である二酸化炭素を必死に排出しようとする防御反応なのです(参考文献:酸塩基平衡について)。
危険なサインの特徴:
- 何もしていないのに呼吸が速い:
激しい運動をしたわけでもないのに、安静にしているにもかかわらず、ハアハアと浅く速い呼吸(過呼吸の状態)になる。
(参考文献:乳酸アシドーシスの症状)
乳酸アシドーシスの主な原因とメトホルミンとの関係
乳酸アシドーシスの原因は一つではありませんが、特に糖尿病の治療薬として広く使われている「メトホルミン」との関係は深く、服用中の方は正しく理解しておくことが非常に重要です。
メトホルミンの作用機序と乳酸アシドーシスの関係
メトホルミンは、主に肝臓が血液中に糖を放出する働き(これを「糖新生」といいます)を抑えることで血糖値を下げる、糖尿病の第一選択薬ともなっている薬です(参考文献:糖尿病診療ガイドライン)。
一方で、私たちの体は、細胞がエネルギーを作り出す過程で「乳酸」という物質を常に作り出しています。この乳酸は、疲労物質というイメージがあるかもしれませんが、通常は肝臓や腎臓できちんと処理され、再びエネルギー源として利用される大切な物質でもあります 。
メトホルミンは、血糖値を下げる主作用の他に、この肝臓での乳酸の処理(利用)を少しだけ抑える作用も持っています (参考文献:メトホルミン作用のメカニズム)。通常、腎臓の機能が正常であれば、メトホルミンは速やかに尿として体の外に出ていくため、この作用が問題になることはほとんどありません。
しかし、何らかの理由で腎臓の働きが悪くなると、メトホルミンが体の中に溜まってしまい、肝臓での乳酸の処理が過度に抑えられてしまいます。 そこに、脱水などで乳酸が通常より多く作られる状況が重なると、処理能力の限界を超えて乳酸が血液中に溢れ出し、血液が酸性に傾く「乳酸アシドーシス」を引き起こしてしまう可能性があります(参考文献:メトホルミンと乳酸アシドーシス)。
メトホルミン以外にもある乳酸アシドーシスの原因
乳酸アシドーシスは、メトホルミンを服用している方だけに起こるわけではありません。以下のような、体が極度の酸欠状態になったり、乳酸の処理能力が低下したりする重篤な病態が原因となることもあります。
- ショック、心不全、敗血症などによる組織への酸素供給不足
- 重度の肝機能障害や腎機能障害
- ビタミンB1(チアミン)の極度な欠乏
- アルコールの多量摂取
(参考文献:乳酸アシドーシス)
これらの状態では、メトホルミンを服用していなくても乳酸アシドーシスを発症するリスクがあります。
メトホルミンの服用時はシックデイ(発熱・下痢・嘔吐時)に要注意
メトホルミンを服用している方が、乳酸アシドーシスを予防するために必ず覚えておいていただきたいルールがあります。それが「シックデイ・ルール」です。これは、文字通り「体調の悪い日(Sick Day)」の薬の飲み方に関するルールです。
シックデイとは、風邪やインフルエンザなどによる発熱、ひどい下痢、嘔吐、食欲不振などで、普段通りに食事ができない、水分もあまり摂れないような体調の悪い日のことを指します。
シックデイが特に危険なのは、発熱や下痢・嘔吐によって体が脱水状態に傾きやすいからです。
脱水になると、体の中の水分量が減り、腎臓に流れる血液の量も少なくなります。すると、腎臓の働きが一時的に低下し、メトホルミンを体の外にうまく排泄できなくなります。 その結果、血中のメトホルミン濃度が意図せず高くなってしまいます。前述したように乳酸が処理されにくくなり、乳酸アシドーシスを発症する危険性が通常時よりも高まります(参考文献:シックデイとは)。
- 発熱、下痢、嘔吐などで食事が十分に摂れない
- 脱水が疑われる
「処方された薬だから、体調が悪くても飲み続けないといけないのでは?」と真面目な方ほど考えてしまいがちですが、メトホルミンに関しては、シックデイの時だけはその考えは危険です。
薬局でも服薬指導のときに聞いたことがあるかもしれませんが、シックデイについては押さえておきましょう。
乳酸アシドーシスのリスクを高める5つの危険因子
シックデイ以外にも、乳酸アシドーシスのリスクを高める要因(危険因子)がいくつか知られています。メトホルミンを安全に使い続けるために、ご自身に当てはまるものがないか、普段から意識しておくことが大切です。
リスク①腎機能・肝機能の低下
メトホルミンは主に腎臓から排泄され、乳酸は主に肝臓で代謝されます。そのため、中等度以上の腎機能障害(目安としてeGFRが45mL/min/1.73㎡未満)や、重度の肝機能障害がある方は、薬や乳酸が体内に蓄積しやすく、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。特に、eGFRが30mL/min/1.73㎡未満の高度な腎機能障害のある方へのメトホルミンの投与は原則禁止(禁忌)とされています(参考文献:メトホルミンと腎障害)。
腎臓や肝臓の状態を知るために、定期的に健康診断などで血液検査を受けましょう。特に定期的に薬を飲んでいる方は、注意が必要です。
リスク②脱水
シックデイの項目でも触れましたが、脱水は乳酸アシドーシスの大きな引き金になります。理由は、脱水によって腎臓への血流が悪くなり、腎機能が低下するためです。
シックデイ(発熱、下痢、嘔吐)以外にも、夏場の暑い環境での多量の発汗、水分補給が不十分な状態での激しい運動、利尿薬(尿を出す薬)の併用なども脱水の原因となります。日常生活では、「のどが渇いた」と感じる前に、こまめに水分を補給する習慣をつけることが重要です。
リスク③過度のアルコール摂取
過度のアルコール摂取も、乳酸アシドーシスの重要なリスク因子です 。アルコール(エタノール)は、肝臓で分解される際に、乳酸の代謝を直接妨げる作用があります。さらに、アルコールには利尿作用があるため、気づかないうちに脱水状態を引き起こすこともあります。メトホルミンを服用している方は、禁酒が望ましいですが、飲酒する場合は必ず適量を守り、飲みすぎないように自己管理することが求められます。
リスク④ヨード造影剤を使用する検査
健康診断や病気の検査で、CT検査や血管造影検査などを受ける際に、「ヨード造影剤」を用いることがあります。このヨード造影剤は、まれに腎臓の機能に一時的な影響を与えることが知られています。
そのため、メトホルミンを服用している方がヨード造影剤を使用すると、乳酸アシドーシスのリスクが高まる可能性があります。検査を受けることが決まったら、必ず事前にメトホルミンを服用していることを医師に伝え、指示に従って検査前後の一定期間(通常は検査施行日とその後48時間)はメトホルミンの服用を中止する必要があります(参考文献:メトホルミンとヨード造影剤の併用について)。
検査前のメトホルミンの一時中止は実現場でもよく目にします。
リスク⑤高齢者である
高齢の方(一般的に75歳以上)は、若い方に比べて乳酸アシドーシスを起こしやすいと考えられています 。その理由としては、加齢に伴って自覚症状がないまま腎臓や肝臓の機能が低下していることが多いこと、体内の水分量がもともと少ない傾向にあること、複数の病気を抱えていたり、多くの薬を服用していたりする場合が多いことなどが挙げられます。
ご本人はもちろん、ご家族も一緒に、日頃から体調の変化に気を配り、特に脱水や食欲不振には注意してあげてください。
病院で的確に症状を伝える準備とポイントを薬剤師が解説
「なんだか体調がおかしい…もしかして乳酸アシドーシスかも?」そう感じて病院に行こうと思っても、「この症状をうまく医師に伝えられるだろうか」、「ただの風邪だと思われて、ちゃんと診てもらえなかったらどうしよう」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
診察という短い時間の中で、的確に情報を伝えるのは難しいものです。
でも、大丈夫です。事前に少し準備をしておくだけで、落ち着いて、そして効果的に医師に状況を伝えることができます。薬局で多くの患者さんを見てきた薬剤師として、その具体的なポイントをお伝えします。
- いつから、どんな症状がありますか?
- 例:「昨日の夜9時頃から急に吐き気が始まった」「3日前から筋肉痛があり、昨日から特にひどくなっている」「今朝から体がだるくて起き上がれない」など、症状が始まった日時と具体的な内容を時系列でメモしましょう。
- 例:「昨日の夜9時頃から急に吐き気が始まった」「3日前から筋肉痛があり、昨日から特にひどくなっている」「今朝から体がだるくて起き上がれない」など、症状が始まった日時と具体的な内容を時系列でメモしましょう。
- 服用しているすべての薬・サプリメントの名前
- メトホルミンはもちろん、他の病院でもらっている薬、ドラッグストアで買った薬、健康食品やサプリメントまで、今、口にしているものすべてを書き出しましょう。「お薬手帳」があれば、それを持参するのが最も確実で、医師・薬剤師にとっても大変助かります。
- メトホルミンはもちろん、他の病院でもらっている薬、ドラッグストアで買った薬、健康食品やサプリメントまで、今、口にしているものすべてを書き出しましょう。「お薬手帳」があれば、それを持参するのが最も確実で、医師・薬剤師にとっても大変助かります。
- 食事や水分の摂取状況
- 「昨日からほとんど食事がとれていない」「嘔吐がひどく、お茶を少し飲んだだけでも吐いてしまう」など、食事がどの程度とれているか、水分はどのくらい飲めているかを具体的に伝えましょう。脱水の有無を判断する上で非常に重要です。
- 「昨日からほとんど食事がとれていない」「嘔吐がひどく、お茶を少し飲んだだけでも吐いてしまう」など、食事がどの程度とれているか、水分はどのくらい飲めているかを具体的に伝えましょう。脱水の有無を判断する上で非常に重要です。
- その他、気になること
- 発熱の有無、下痢や嘔吐の回数、飲酒の有無など、シックデイやリスク因子に該当する情報も忘れずにメモしておきましょう。「いつもと違う」と感じる点があれば、どんな些細なことでも伝えてください。
これらの情報を書いたメモを持参し、それを見ながら説明すれば、焦らずに状況を伝えることができます。「こんなことまで話していいのかな?」と遠慮せず、あなたの感じている不安や症状を、ありのまま伝えることが、適切な診断と治療への第一歩です。
乳酸アシドーシスの症状に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 乳酸アシドーシスの死亡率はどのくらいですか?
A1.
乳酸アシドーシスは、かつては発症すると死亡率が約50%にもなると報告されていましたが、最近は25%程度にまで改善してきました(参考文献:乳酸アシドーシスと死亡率)。
これはあくまで治療が遅れた場合や、重篤な状態になってから診断された場合のデータも含まれています。最も重要なのは、この記事で解説したような初期症状の段階で「おかしい」と気づき、速やかに適切な治療を開始すれば、救命できる可能性は十分にあるということです。だからこそ、「いつもと違う」と感じたら、ためらわずに医療機関に相談することが何よりも大切なのです。
Q2. 軽い筋肉痛だけでも受診すべきですか?
A.
もし、筋肉痛だけが現れていて、他に吐き気や強いだるさといった症状がなく、数日で自然に治まるようであれば、過度に心配する必要はないかもしれません。例えば、普段しない運動をした後など、原因がはっきりしている場合です。
しかし、メトホルミンを服用中の方で、特に原因に心当たりがないのに筋肉痛が続く、または徐々に痛みが強くなってくる場合は、乳酸アシドーシスの初期症状の可能性も完全に否定はできません。不安な場合は、「軽い症状だから」「気のせいかもしれない」と我慢したり自己判断したりせず、かかりつけの医師や、薬剤師に一度相談してみることをおすすめします。
何もなければ安心できますし、万が一の場合にも早期対応につながります。
Q3. 乳酸アシドーシスを予防するために日常生活でできることはありますか?
A3.日常生活で意識していただくことで、乳酸アシドーシスのリスクを減らすことは可能です。特に重要なのは以下の3つのポイントです。
- こまめな水分補給を心がける:
脱水は乳酸アシドーシスの大きな引き金になります。特に夏場や運動時、入浴後などはもちろん、普段から「のどが渇いた」と感じる前に、意識的に水分(水やお茶など糖分の少ないもの)を摂るようにしましょう。 - 過度な飲酒を避ける:
アルコールとの付き合い方については、必ず医師の指導を守ってください。特に、大量の飲酒は絶対に避けましょう。 - 「シックデイ・ルール」を必ず守る:
体調が悪く、食事が十分に摂れない、脱水かもしれないと感じたら、自己判断でメトホルミンを飲み続けず、必ず医師や薬剤師に相談する、というルールを徹底しましょう。これが最も重要な予防策の一つです。
まとめ:乳酸アシドーシスの症状を感じたら自己判断せず、すぐに医療機関へ相談を
この記事では、乳酸アシドーシスの症状、特に危険なサインの見分け方と、万が一の時に命を守るための具体的な行動指針について、薬剤師の視点から詳しく解説しました。
最後に、最も大切な要点を復習しましょう。
- 「吐き気・だるさ・筋肉痛」などが、いつもの体調不良や薬の副作用とは違うと感じたら、それは乳酸アシドーシスの危険なサインかもしれません。
- 特に、発熱や下痢などで食事がとれない「シックデイ」には、自己判断でメトホルミンを飲み続けることは絶対にやめ、必ず医師や薬剤師に相談してください。
- 少しでも「おかしいな」「いつもと違うな」と感じたら、決して我慢したり、「様子を見よう」と自己判断したりせず、すぐにかかりつけの病院や薬局に連絡・相談してください。 時間帯によっては救急外来の受診もためらわないでください。
乳酸アシドーシスは頻度の高い副作用ではありませんので、過度に恐れる必要はありません。正しい知識でしかるべきときには正しい対応をしていきましょう。

メトホルミンは、糖尿病治療において第一選択で用いられる極めてありふれた薬です。乳酸アシドーシスの頻度は低いものの重篤な副作用であり、吐き気やだるさといった初期症状の見極めと、「シックデイ(体調不良時)」の対応が命を守る鍵となります。この記事では、危険なサインの見分け方と具体的な行動基準を解説しました。正しい知識で過度に恐れず、日々の体調変化に注意し、「いつもと違う」と感じたら速やかに医療機関へご相談ください。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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