「いつもと同じ薬をもらったのに、薬局を変えたら値段が違った」
こんな経験をした方もいるのではないでしょうか。
実は、薬自体の価格はどこの薬局でも同じですが、薬局の立地や設備、受けられるサービスによって自己負担額が変わりきます(参考文献:調剤報酬点数表(令和7年10月1日以降、順次施行)|日本薬剤師会)。
この記事では、調剤薬局の料金の仕組みと薬局ごとに金額が違う理由、正しい薬局の選び方を薬剤師が詳しく解説します。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム
おかげさまで28年間、安心信頼の個人輸入代行・オオサカ堂のコンテンツ制作チーム。専門知識を活かし、正確で分かりやすい情報発信を心がけています。 薬剤師資格保有者が監修。
目次
【結論】安い薬局の見分け方は基本的な加算を理解すること
薬局で支払う金額は「調剤基本料」と「ジェネリック医薬品の在庫数」によって大きく変わります。
薬局で支払う料金は、大きく以下3つで構成されています(参考文献:調剤報酬点数表(令和7年10月1日以降、順次施行)|日本薬剤師会)。
- 調剤技術料(調剤基本料と薬剤調整料)
- 薬学管理料
- 薬剤料
薬局では支払う料金の大項目があり、それに対して必要に応じて加算され最終的な料金が決まります。
この中で、薬局によって金額に差が出やすいのが「1.調剤技術料に含まれる調剤基本料」です。
特定の病院からの処方せんを大量に受け付けている薬局は、この基本料が安く設定されます。
また、ジェネリック医薬品の取扱品目数によっても支払金額に差が出ます。
安い薬局を見分けるために理解したい「3つのポイント」
ポイント①:調剤基本料|薬局の立地と規模で決まる「基本料金」
ポイントの1つ目は調剤基本料です。
薬局が処方せんを受け取って薬を調剤する際にかかる基本的な手数料のことで、基本料の金額(点数)設定は国が定めています。
例えば、大病院の目の前にあり、その病院の処方せんを集中して受け付けている薬局は、点数が低く(=安く)設定されています。
「病院の前」ではない点に注意。点数が低く設定されるのは、大学病院や市立病院などの大病院です。
一方で、様々な医療機関からの処方せんを受け付けている薬局は、備蓄する薬の種類が多くなるため、高い点数が設定されるのが一般的です。
薬局がどこにあって、どのくらい集中して処方せんを受け付けているかによって、調剤基本料が変わってきます。
ポイント②:各種加算|サービスの質で上乗せされる「オプション料金」
ポイントの2つ目は薬局の対応や体制に対して加算される、いわゆるオプションの扱いとなる料金です。
薬局でもらった明細書を見ると、「地域支援体制加算」や「後発医薬品調剤体制加算」といった項目が記載されていることがあります。
これらは、「夜間・休日でも対応できる体制にある」「ジェネリック医薬品を多く備蓄している」といったサービスを提供している場合に加算されます(参考文献:00調剤基本料(処方箋の受付1回につき)|しろぼんねっと)。
すなわち、“質の高いサービスを提供している薬局”ほど加算が増えるため、窓口での支払いが高くなります。
これは、裏を返せば安心料ともいえるでしょう。
ポイント③:薬剤料|薬そのものの値段
ポイントの3つ目は薬そのもの金額です。
薬の価格(薬価)そのものは国の定めにより、どこの薬局でも全国一律です。
しかし、調剤する薬が「先発医薬品」か「ジェネリック医薬品」かによって支払額は異なります。
先発医薬品を選ぶと、薬価は高くなります。
また、令和6年10月以降、「医療上の理由がなく先発医薬品を希望」した場合、後発医薬品との差額の一部を特別の料金を支払うことになりました(参考文献:後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省)。
つまり、医療上必要でない場合に先発医薬品を選択すると、医療費が今までよりも高くなります。





近年、メーカー都合でジェネリック医薬品の流通制限の問題が生じています。薬局が普段仕入れているジェネリック医薬品を仕入れたくても仕入れられない事態が発生しています。このような場合、薬局は仕入れられる医薬品で代替するしか方法がありません。もしメーカー都合で薬局がジェネリック医薬品を準備できない場合に、先発医薬品が調剤されても負担額は増えません。
安い薬局の見分け方を理解した上で薬剤師が教える正しい薬局の選び方
物価高が続いている昨今、出費は1円でも安く済ませたいと思うでしょう。しかし、窓口負担が安いという理由だけで、薬局を決めるのはおすすめできません。
安全に薬を使うため、信頼できる「かかりつけ薬局」を持つことが非常に重要だからです。かかりつけ薬局とは、あなたのこれまでの処方歴だけではなく、体質や過去の副作用歴、市販薬との併用などを把握し、服薬指導を行ってくれる薬局のことです。
例えば、複数の病院にかかった場合に、かかりつけ薬局を決めておけば、飲み合わせや重複した薬剤がないかのチェック、副作用のリスクを未然に防いでくれるので、安心して薬が服用できます。
「金額」を重視するか、「利便性」や「安全」を取るか、総合的に考えて選びましょう。
安さ重視なら「敷地内薬局」
病院の敷地内や医療モール(様々なクリニックや薬局が1箇所に集まっている施設)にある薬局は、基本料金が低く設定されていることが多くあります。「早く安くすませたい」という方にはメリットになります。
一方で、利用する患者数が多く、時間帯によってはかなりの待ち時間を要する可能性がある点はデメリットといえます。
速さと在庫重視なら「門前薬局」
一番、なじみのある病院の前や近くにある薬局を門前薬局といいます。門前薬局は、特定の医療機関の薬を中心に扱っているため、在庫切れのリスクはほぼありません。特定の医療機関と密な連携をしているため、待ち時間も比較的短くてすみます。
しかし門前薬局に関しても、利用する時間帯によって患者が集中しているケースがあります。特に薬を用法ごとにシートから取り出して調剤をする一包化や、粉薬、水薬の調剤が中心となる門前薬局の場合は、敷地内薬局と同様に待ち時間を要します。
利便性・ポイント重視なら「ドラッグストア併設薬局」
ドラッグストア併設の調剤薬局では、独自のポイントサービスを展開しているケースがあります。
処方せん医薬品については「ポイント倍増キャンペーン」などは対象外になりますが、通常ポイントは付与されるケースが多く、クレジットカードで決済すればポイントの二重取りも可能です。
また、調剤の待ち時間に日用品の買い物ができるので、利便性とポイント活動それぞれの面でメリットと言えます。
ただし、ドラッグストアと調剤部門の営業時間が同じとは限らないので、事前に調べておくと良いでしょう。
相談のしやすさ・丁寧さ重視なら「かかりつけ薬局」
かかりつけ薬局を決めておくと、顔なじみのスタッフに相談できる安心感があります。
これまでの薬剤服用歴や体質を管理しているため、薬の飲み合わせや重複を確認してもらえます。
さらにかかりつけ薬剤師というシステムもあり、希望すれば同じ薬剤師に対応してもらえるので、体調の変化に気づいてもらえたり、在宅支援に対応していたりと、手厚いサービスが魅力です。
これらのサービスは基本料が割高になる傾向にありますが、薬に関することだけではなく、健康についても相談しやすいのは大きなメリットです。
該当薬局から遠方にある全く別の医療機関の処方せんを持ち込んだ場合は、在庫がないケースがどの薬局でも多々ありますが、かかりつけ薬局であれば気兼ねなく在庫を準備してもらうようお願いすることが可能です。





薬局によって対応サービスは異なりますが、筆者の勤めていた薬局では事前にLINEで処方箋を送ってもらい待ち時間を短縮。相談に応じて無料で配達または配送などを行っていました。
長期的に薬を服用する必要がある人にとっては、多少のコストをかけても価値があると言えるでしょう。
調剤薬局で薬代を安くする方法
ジェネリック医薬品を希望する
薬代を安くする方法としてすぐに実践できるのが、「ジェネリック医薬品」を調剤してもらうことです。
ジェネリック医薬品とはすなわち後発医薬品のことで、先発医薬品と同じ有効成分で、同じような効果がある医薬品です。
厚生労働省の厳格な基準をクリアして製造販売されるため、品質(同等性)や効果(有効性)は担保されています(参考文献:後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について|厚生労働省)。
開発費が抑えられるたので、多くの後発品で価格が安く設定されているのが特徴です。
薬局で処方せんを渡す際に、「ジェネリック医薬品を希望」することを伝えると、負担額を減らせます。
なお、後発品の変更に不安を感じる場合は、薬剤師とよく相談してください。
お薬手帳を必ず持参する
お薬手帳を持参すると、安全面のチェックだけでなく、窓口負担が安くなります。
条件にもよりますが、原則として3カ月以内に同じ薬局にかかる場合に、お薬手帳を持参すると「服薬管理指導料」という項目が安くなる仕組みがあります(参考文献:調剤報酬点数表(令和7年10月1日以降、順次施行)|日本薬剤師会)。
支払額を安くすませたいと考える方は、忘れずにお薬手帳を持参しましょう。
お薬手帳については、次のページで詳しく紹介していますので、ご参照ください。
夜間・休日など時間外の利用を避ける
薬局に行くタイミングによっても料金は異なります。
多くの薬局では、平日の夜間(一般的に午後7時以降)や土曜の午後、日曜・祝日に調剤すると「時間外等加算」という手数料が発生します(参考文献:01薬剤調製料|しろぼんねっと)。
そのため、緊急の場合などを除いて、できるだけ平日日中の診療時間内にくすりを受け取るようにすると良いでしょう。
仕事の都合などでどうしても薬局に行くのが閉店ぎりぎりになってしまうという場合もあると思います。その場合、処方せんを受け取ったら、まずかかりつけ薬局に処方せんを提出して、用事が済み次第薬を受け取りに行けば解決することもあります。
処方薬が余ったら薬剤師に相談する
飲み忘れ等で薬が余っている場合は、薬剤師に相談しましょう。飲み残しがあり、薬が手元に余っていることを伝えると、残っている薬の数を把握した上で、薬剤師が処方医師に確認し、処方日数を調整できる場合があります。
処方日数が減れば、その分薬剤料は安くなります。
薬の飲み残しについては社会問題にもなっており、75歳以上の高齢者を対象にした調査によると、年間約475億円分もの薬が使われずに余っているという推計データがあります(参考文献:「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」の報告書|日本薬剤師会)。
窓口負担を減らすことは、国の医療費削減にも繋がります。
「先生に言いづらい」という声もよく聞かれますが、薬局でなら相談しやすいのではないでしょうか。





処方箋を薬局に持ってきた段階でも調整はできます。時と場合により今回はそのままで、次回調整となるケースも筆者は経験しました。例えばAという薬の10日分の残薬があるときは、Aという薬のみ10日分処方日数を減らしてもらうなどの対応です。
医療費を安くしたい!医薬品の個人輸入も一つの方法
医療費を安くする目的であれば、「医薬品の個人輸入」を利用する方法もあります。 医薬品の個人輸入とは、自分自身で使用することを目的に、海外の事業者から医薬品を直接購入することです。
日本では厚生労働省によって、個人の自己責任で決められた数量内での医薬品を輸入することが認められています。 特に、保険が適用されない薬や、国内では高額になりがちな薬を安く入手する手段として、ニーズのある選択肢の一つです。
現状の医療では満たされないニーズに応える医薬品個人輸入
個人輸入が人気の理由は、「コスト」と「アクセシビリティ」です。 海外では、日本よりも安価にジェネリック医薬品が流通しているケースがあり、為替や現地の価格水準の恩恵を受けて、医療費を抑えられる場合があります。
また、日本国内ではまだ承認されていない新しい薬や、国内では手に入りにくいサプリメントなどを入手できる点もメリットです(参考文献:医薬品の個人輸入について|厚生労働省)。 病院に行く時間が取れない方や、プライバシーを守りたい悩みを持つ方にとって、通院の手間なく自宅で受け取れる利便性は、既存の医療サービスでは満たせないニーズを補完しています。
安心できる業者を選ぶことが何よりも大切
個人輸入には国内の調剤薬局にはないリスクも存在します。 最大の違いは「公的な救済制度がない」ことです。 国内で正規に処方された薬で重篤な副作用が出た場合は「医薬品副作用被害救済制度」の対象になりますが、個人輸入した医薬品は対象外となり、すべて自己責任となります(参考文献:医薬品等を海外から購入しようとされる方へ|厚生労働省)。
また、海外製品ゆえに説明書が外国語であったり、偽造品が紛れ込んでいたりするリスクもゼロではありません。 医薬品の個人輸入は、「安いから」という理由だけで安易に利用せず、安心できる業者を選ぶことが重要です。
個人輸入に関しては、下記で詳しく説明しているので参考にしてみてください。
「調剤薬局 どこが安い」に関するよくある質問
Q1. 安い薬局の見分け方はありますか?
薬局の外観で判断することは難しいですが、一般的に大きな病院の近隣や敷地内にある薬局は基本料が安くなりがちです。
また、グループ薬局の場合も一部の例外を除いて安くなる傾向にあります。
Q2. どうして薬局によって値段が違うのですか?
薬局によって価格が異なる主な理由は、薬局の行う事業内容により算定できる点数が異なるためです。
立地条件や備蓄しているジェネリック医薬品の割合、休日・夜間の対応、在宅医療に取り組んでいるかなど、どのような事業を行うかによって変わってきます。
提供できるサービスの質や体制によって、国の定めるルールに基づき料金が変動する仕組みです。
Q3. 薬局によって値段が違うので、薬局を使い分けてもいいですか?
使い分けることは可能ですが、医療安全の観点からはおすすめできません。
複数の薬局を利用すると、飲み合わせや副作用発現のリスクが高まります。
結果として副作用やアレルギーが起こったり、同じ成分の薬を服用したりする可能性があります。
慢性疾患などで定期的に受け取る薬がある場合は、かかりつけ薬局を決めておいた方が安心です。
まとめ:調剤薬局はどこが安いかも重要だが主体的に「かかりつけ薬局」を選びましょう
調剤薬局で支払う料金は、調剤基本料、各種加算、薬剤料の3つによって変動します。
安さを重視するのであれば「病院の近くの薬局」や「ジェネリック医薬品」を選択すると良いでしょう。
しかし、それ以上に大切なのは「安心・安全」です。
お薬手帳を活用し、信頼できるかかりつけ薬局を持つことで、安心して相談できる環境が作れるだけでなく、無駄な薬を減らし健康維持にかかるコスト削減に繋がります。
安い薬局選びも大切ですが、信頼できる薬局を見つけておくといざという時に安心です。


薬局の支払額は、調剤基本料(立地・規模)と各種加算(サービス内容)によって変わるため、一概に「安い薬局」を見分けるのは困難です。安さ重視ならジェネリック医薬品を選択、大きな病院の近隣や敷地内薬局を利用しましょう。しかし、ジェネリック医薬品を選択する以外での値段の差はわずか。最も重要なのは薬の安全性です。複数の医療機関からの薬を一元管理し、飲み合わせなどを確認してくれるかかりつけ薬局を持つことは、長期的な安心とコスト削減に繋がります。安さだけでなく、信頼できる薬局を主体的に選びましょう。
【監修】オオサカ堂 コンテンツ制作チーム(薬剤師在籍)
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